佐野日大(栃木)が超守備的布陣で初の4強進出を決めた。5-4-1の布陣で引いて守り、隙あらば鋭いカウンターを仕掛けるスタイルを貫徹。後半ロスタイム、カウンターからエースFW長崎が決勝点を決める劇的な展開で新しい歴史を刻んだ海老沼秀樹監督(46)は「ボールをひたむきに追った結果」と目を潤ませた。

 初夏までは攻撃的なサッカーを目指していた。昨年6月、高校総体の栃木県予選準決勝で矢板中央に0-3で完敗し、方針転換した。タレントぞろいとはいえない中、いかに勝たせるか。「30代までは美しいサッカーを目指したロマンチストだった」と振り返る海老沼監督は、意を決して5-4-1への変更を決断した。これに選手は猛反発。監督に賛同したのは一時は主将のDF福田だけという空中分解の危機に陥った。

 監督と選手は何度も話し合いの場を持ち、指揮官は「守備だけでなく、あくまでも攻撃の準備のための布陣」と意図を説明し「必ず全国に連れて行くから、信じてついてきてくれ」と訴えた。7月からは栃木県リーグ1部に新布陣で挑み9勝2敗2分け。「このやり方で勝てる」と自信を得て、4大会ぶりに栃木県大会を突破した。

 「以前は攻撃型のチームだったのに」との声が聞こえてきてもぶれなかった。FW長崎は「押されることは想定内。結果が一番。体を張ること、必死で走ることで伝えられることもある」と胸を張った。我慢を乗り越えた先に、新しい歴史の扉が開いた。【岩田千代巳】