サッカーの全国高校選手権は7日、埼玉スタジアムで準決勝2試合が行われる。いずれも伝統校と初めて4強入りしたチームが対戦。20大会連続出場の高円宮杯U-18チャンピオンシップ王者の青森山田と東海大仰星(大阪)、2大会前に準優勝した前橋育英(群馬)と佐野日大(栃木)がぶつかる。各校は6日、都内や埼玉県内で最終調整した。

 前橋育英MF岩下航(3年)が、ふるさとへの感謝の気持ちをゴールに変える。昨年4月に震災があった熊本市出身。中学1年で西日本ナショナルトレセンに選ばれ、高校進学時は複数の誘いがあった。自立したい気持ちが強かったことと「全国に出るだけじゃなく、勝ちたい」という思いで強豪の前橋育英を選んだ。

 入学後、すぐに気づいた、「熊本にこんな環境はない」。ドリブル1つとっても、「特別にうまい選手がいた」。当時の3年生は選手権で準優勝。やっていけるのか不安を持ち、5つあるチームの一番下から始めた。全体練習後は欠かさず自主練習し、3年でトップチームに上がった。高校総体優勝の市船橋との2回戦ではフル出場し、金星獲得に貢献した。

 地元で一緒にボールを蹴った仲間の中には、震災で親族を失った人もいる。しのぶことしかできなかった岩下に、大会開幕後は熊本の友人らから多くの激励のメッセージが届く。「最後の年だから」。大会前に家族にはしばらく帰省しないと告げた。「決勝に出て前橋育英の新しい歴史を作りたい」。テレビ越しの勇姿を地元への新年のあいさつにする。【岡崎悠利】