サッカーの全国高校選手権は今日9日、埼玉スタジアムで決勝が行われる。高円宮杯U-18チャンピオンシップ王者の青森山田と、2大会前に準優勝した前橋育英(群馬)が激突。ともに通算20度以上出場で優勝経験はない。「2冠」を目指す青森山田は東京入りするGK広末陸(3年)を中心とする「無事故」の守りで、前橋育英も5戦無失点の堅守で臨む。8日、両校はそれぞれ、都内と埼玉県内で最終調整した。

 悲願の選手権初制覇へ「事故ゼロ」運動だ。青森山田GK広末はセーブ練習を繰り返し、調整を終えると「いつも通りやれば勝てる」と自信をみなぎらせた。

 12月にJリーグのユースを含めて競われる高円宮杯U-18を初制覇。高校世代最強の座をつかみ、下馬評通り勝ち上がった。決勝で恐れるのは事故だ。常々、黒田剛監督(46)は「選手権ではDFの背後へのボールで事故というかアクシデントが起こりやすい」と語り、ロングボールでDFラインの裏へ抜け出されての失点を警戒。準決勝の東海大仰星戦でも、DFラインの隙を突かれて失点した。

 決戦を前に、広末は事故防止へ「安全3カ条」を掲げた。

 (1)声かけ 広い埼玉スタジアムで意思伝達を意識する。「会話を多くする。プレーが切れたタイミングやハーフタイムでコミュニケーションを取る」とDFに積極的に声かけし、危険を未然に防ぐ。

 (2)指さし確認 決勝は大歓声でコーチングの声がかき消される。「身ぶり手ぶりを使う。ジェスチャーを使いたい」。声だけでなく体全体で連係を作る。

 (3)慌てない 抜け出されて決定的な場面になっても「『事故』が起こるのはしょうがないが失点につなげなければいい。経験と自信がある」と冷静に止める。

 致命傷につながる失点は許さない。4試合で15得点ばかりが注目されるが、2失点と守りも安定している。「やることをやるだけ。最後は出し切って勝ちたい」。最後尾から広末が細心の注意を払い、4134校の頂点に立つ。【島根純】