清水は10日、FW大前元紀(27)が大宮に完全移籍すると発表した。この日、静岡市内のクラブハウスを訪れた大前はスタッフらにあいさつを済ませると、神妙な面持ちで移籍を決断した理由を語った。

 「清水でのプレーを第一に考えていたことはうそではない。ただ、一サッカー選手としてゼロから挑戦したい気持ちがあった」

 クラブは今季限りで契約満了を迎える大前に契約延長を提示。昨年の契約更改から慰留を続けてきたが、年俸や契約年数などの条件面で折り合いがつかなかった。ただ、それだけが移籍に至った理由ではない。08年入団から約8年半在籍したクラブに対する大前自身の思いと、クラブ側の慰留に対する熱意に相違があったようだ。誰よりもクラブ愛があるからこその思いもある。

 「大宮でいいプレーをすれば『やっぱり出してはいけない選手だった』と思ってくれるはず。それで会社が変わってくれれば。そのためにはいいプレーをしなければいけない」

 もっとも、サポーターに対する感謝の気持ちは強い。大前は「応援がなかったら今の僕はいない。本当に感謝しきれません」。今年でプロ10年目。昨年主将としてもJ1復帰に貢献した清水のエースは、新天地で新たな挑戦をするべく、愛着のあるクラブに別れを告げた。【神谷亮磨】