2年ぶりの被災地に、正GK候補は計22秒間の沈黙の後、神妙に言葉を紡いだ。新年始動日を迎えた仙台は12日、東日本大震災の被災地・名取市閖上を訪問。期限付き移籍先のJ2松本から復帰したGKシュミット・ダニエル(24)は、復興の現状をみつめ、今季の意気込みを語った。また、開幕戦と第2節の対戦カードが発表され、仙台は2月25日にホーム開幕で札幌と、3月4日にアウェーで磐田と対戦する。

 震災と復興に対する思いを、簡単に言葉にすることはできなかった。シュミットは来日した2歳から仙台で育った。15年にプレーしたJ2熊本でも、翌年地震で被災した。2つの震災について聞かれると、16秒間沈黙して「まぁ」と答えた後も6秒黙り込み、「複雑」とつぶやいた。そして、「特にコメントできるようなことはないです」と神妙な面持ちで述べた。

 復興に寄与する、決意の固さの裏返しだった。2年前も始動日に閖上を訪問。当時と比べ、街は変わった。今年7月に完成予定の140戸が入居可能な集合災害公営住宅を見て、「正直良かった」と話した。一方で、14年夏に建立された慰霊碑の説明、津波で1階部分が流れたかまぼこ製造工場の社長の体験談も聞いた。被災地の過去と今に触れ、「復興のシンボルとしてベガルタは何をしなければいけないのか」。視線をそらさず、語った。

 その使命感が、シュミットを駆り立てる。約1年半ぶりに復帰した今季、昨年末に六反勇治(29)が清水に移籍。正GKの座を関憲太郎(30)らと争う。昨年11月に渡辺晋監督(43)に松本で、決意を問われた。「うちで契約があるから、後1年仕方なくやるのか、仙台でやりたいのか」。迷わず答えた。「仙台でやりたいです」。固い意志を貫き、仙台に戻って来た。

 昨年10月に日本代表候補合宿に参加。自信も深めた。「まず出られるようにしっかり毎日トレーニングして、アピールして。ベガルタにタイトルをもたらせるような1年にしたい」。被災地に希望の灯をともす1年へ、シュミットの挑戦が始まった。【秋吉裕介】

 ◆シュミット・ダニエル 1992年(平4)2月3日、米イリノイ州生まれ。中大をへて、14年仙台に加入。熊本に期限付き移籍をへて、16年に松本へ期限付き移籍後、今季仙台に復帰した。16年10月に日本代表候補GK合宿に選出。196センチ、90キロ。