J2名古屋の風間八宏新監督(55)が、自由主義で再建に着手する。13日、豊田市内で就任会見。1年でのJ1復帰がノルマになるが、昇格やJ2優勝という言葉は一切、口にしない異例のお披露目となった。選手の個性を伸ばすことに主眼を置き「言うことを聞かなくても、うまくやってくれればOK」と主体性を求める方針。型破りなスタイルで、強豪復活を目指す。

 真っ白なキャンバスに、絵を描く。風間新監督が考える名古屋再建のイメージは、そんな感じだろうか。大勢の報道陣が詰めかけたお披露目会見。川崎Fを率いた昨季、J1で優勝争いを繰り広げた同監督は胸を張って所信表明した。

 「組織の中に隠れてしまうと(選手は)うまくならない。それを変えないといけない。僕の言うことを聞かなくても、うまくやってくれればOK。1人でボールを持って、抜いていくなら全然構わない。空中だけでサッカーをやるかも知れません。パスサッカーに、とらわれてはいない」

 クラブは昨季、史上初のJ2降格という屈辱を味わった。ノルマは1年でのJ1復帰。だが会見では、1度も昇格や優勝という言葉を口にしなかった。

 「未来を見据えてやるのは好きではない。今どれだけ全力でやるかで、明日が変わる。日々、進化する。どのチームと対戦しても、どこにも負けないものを作る。それが目標。楽しく勝つことが大事だし、厳しい空気と、発想が豊かになる空気をつくっていきたい」

 型にはめるのではなく、主体性を求めながら個性を伸ばす方針だ。川崎F時代は、元日本代表FW大久保を3年連続のJ1得点王になるまで復活させた。昨季は川崎FでJ1年間3位、天皇杯準優勝。タイトルは逃したが、JリーグMVPに選出されたMF中村や、若手のMF大島らを操りながら見せた攻撃的サッカーは魅力的だった。名古屋はDF闘莉王、FW永井ら多くの主力が退団し、在籍33選手のうち半数以上の18選手が新加入となる。

 「(川崎F時代の)過去は何の負債にも貯金にもならない。自分たちの望みは一番高いところに置く。豊田スタジアムを満員にする。全員が楽しめるグラウンドをつくります」

 自由主義の風間グランパスは16日に始動。新たな航海に出る。【益子浩一】

 ◆風間八宏(かざま・やひろ)1961年(昭36)10月16日、静岡市生まれ。清水商時代に脚光を浴び、79年世界ユース選手権に出場。筑波大で日本代表入り。卒業後にドイツのブラウンシュバイクなどでプレーし、89年に帰国して広島の前身マツダ入り。93年の第1Sで「J日本人第1号ゴール」を決めた。97年現役引退。桐蔭横浜大、筑波大監督を歴任し、12年4月から昨季まで川崎F監督。