「山の神」よ、ありがとう! J2山形のゴールを体を張って守り続け、今季からJ3北九州に期限付き移籍したGK山岸範宏(38)が日刊スポーツにメッセージを寄せた。14年6月に浦和から加入。同年のJ1昇格プレーオフ準決勝では後半ロスタイムにヘディング弾を決めて昇格の原動力になった。山形での2年半を振り返りつつ、苦楽をともにしたサポーターへの思いも語った。

 「山の神」が北九州に旅立つ。14年のJ1昇格、天皇杯準優勝に始まり、15年のJ2降格、16年のJ2苦戦など、起伏に富んだ山形での2年半に感謝し、新しい1歩を踏み出す。

 山岸 自分のキャリアの中でも山形にいた2年半はすごく濃密で充実していたし、いろんな方に支えられて過ごせた。この地を離れるのは、人間として寂しさを感じる。山形の地で、チーム内で責任のある立場を任されて自分も勉強させてもらって成長できた。浦和の時に小さくなっていたキャリアの炎を、またよみがえらせてもらった。いろんな感謝が山形にはある。言葉だけでは表現できない。

 14年6月、山岸の加入で山形は上昇気流に乗った。闘志を前面に出すスタイルでゲーム主将に就任。6位で滑り込んだJ1昇格プレーオフでは、準決勝の後半ロスタイムに「奇跡」とも言われたヘディング弾を決めた。サポーターからは「山の神」とたたえられ、代名詞として定着した。

 山岸 準決勝のヘディングシュートがスポットライトを浴びがちだけど、昇格したことの方が印象深いし、自分が加入したから昇格できたとは思わない。昇格の要因は、選手が同じ方向を向いて自信を持って戦えていたことと、石さん(石崎信弘前監督)がブレずに積み重ねてきた指導の成果だと思う。14年シーズンの終盤2カ月は、チームもスタジアムもポジティブな空気に包まれていた。自信を持って試合に臨めていたし、結果もつかめていた。

 声を張り上げ、ゴール前に立ちはだかる守護神山岸にとって、サポーターの声援が何よりの活力だった。2年半を振り返った決意の色紙には「感謝」の2文字をしたためた。

 山岸 14年の終盤みたいに、いい時だけじゃなくて、15年のJ2降格、16年の苦戦と、サポーターの期待に応えられないことのほうが多かった。もっともっとサポーターを喜ばせたかったし、多くの勝利と多くの笑顔を一緒に共有したかった。

 勝てば称賛され、負ければブーイングを浴びることもあった。いつもゴール裏へのあいさつは、主将の山岸が先頭に立って行っていた。

 山岸 思いがぶつかりあったこともあったけど、それは同じモンテディオの勝利を目指す上での、同じベクトルの中にあるぶつかり合いだと思っていた。ぶつかったからこそ、強い情がある。苦しい時期でも、選手、チームを鼓舞し続けてくれたのはうれしかったし、感謝の気持ちがある。