J1川崎フロンターレで活躍したブラジル人FWレナチーニョ(29)が、移籍金ゼロで日本の“5部リーグ”にやってきた。

 JFL昇格を目指す関東1部リーグのボンズ市原が24日、千葉・市原市のクラブハウスでレナチーニョの入団会見を行った。ポルトガル2部ヴァルジムを経て日本へ、しかもJ1から5つ目のカテゴリーとなる地域リーグ入りを選択した。日本に到着して2日目というレナチーニョは「また日本に戻ってこれてうれしい。チームの昇格に力を尽くしたい」と落ち着き払った表情で語った。

 J1クラスのアタッカーの獲得に、クラブも興奮を隠せない。ゼムノビッチ監督は「いい選手が来てくれた。昨年は厳しい試合で点が取れなかった。フィジカルが整えばやってくれる」と笑みが絶えない。その一方、代表取締役の永野祐太郎氏は「JFLへ昇格すると言い続け、2年が経ちました。今年は市原市の皆さまにこれまで以上、やる気を感じてもらうために」と、今季にかける強い覚悟を明かした。

 レナチーニョはブラジルの名門サントス出身で「ロビーニョ2世」とも呼ばれたテクニシャン。08年8月から10年8月まで川崎Fに所属し、リーグ戦56試合で21得点と活躍した。その後はポルトガル、ブラジルを渡り歩き、岡田武史監督が率いた中国1部杭州緑城でも主力選手としてプレー。タイ、アルバニアを含め、今回のボンズ市原で7カ国計11クラブを渡り歩くことになる。そんな実績十分のまだ29歳を、なぜ日本の地域リーグのクラブが獲得できたのか? 

 木村哲昌ジェネラルマネージャーは「タイミングですよ」とニンマリした。そもそも前所属のヴァルジムとの契約が年末で切れ、移籍金が発生しない状況にあった。クラブ側は攻撃力の高いスペシャルな選手を探ったところ、ブラジルコネクションでレナチーニョにたどり着き、日本での第一交渉権を先んじて獲得した。そこへレナチーニョ自身も代理人に「日本からのオファーがあれば教えてくれ」と日本行きを希望していたことも有利に働いた。

 レナチーニョは「ブラジルの大きなクラブ、ウクライナからも誘いがあった」という中、「将来のビジョンを重要視した。監督も、ジェネラルマネージャーも電話してくれたが、みな考えが共通していた。市原の町のこと、市民のことがファーストだと。彼らの多くの喜びを与えたい、と。そこに共感したよ」。大きな目を見開きながら、そう話した。

 ボンズ市原は昨季の関東1部で2位に終わり、全国社会人大会でも上位に勝ち上がれず、JFL昇格がかかる全国地域サッカーチャンピオンズリーグに進出できなかった。ゼムノビッチ監督は「(連日の)5連戦が当たり前、こんなの世界を見てもない。運もあるし、世界で一番厳しい戦いだよ」と言う。そんな厳しい戦いを勝ち抜くためにも、特別な選手が必要だった。まずは1年契約で、背番号は34。気になる年俸は非公表だが、どうやら高額な一般サラリーマンほどのようだ。

 今季の関東1部リーグは注目度が高い。長く鹿島アントラーズで活躍した元日本代表DF岩政大樹が、東京ユナイテッドFCに加入。その東京ユナイテッドFCと、4月中旬予定の開幕戦で当たる見込みだ(対戦カード、日程は未発表)。ポルトガル2部リーグでの4カ月で6得点を記録したというレナチーニョ。日本の“5部”リーグが一段とヒートップしそうだ。【佐藤隆志】