プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月1日付紙面を振り返ります。2001年の終面(東京版)は中田英寿が古巣に勝利給アシストを報じています。

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 ローマMF中田英寿(24)が古巣のJ2湘南ベルマーレの勝利給をアシストすることになった。湘南は2月28日、中田との昨季に続くユニホームのスポンサー契約を発表。中田の強い意向により、スポンサー料の一部で選手の勝利給を増額するボーナスが設定された。現役選手がポケットマネーで1クラブの勝利給を支払うのは世界でも異例。オーナーもびっくりの「ヒデボーナス」はJ1昇格を狙う湘南の大きなサポートになりそうだ。

 中田が古巣のJ1復帰を願ってビッグプランを実行する。湘南のユニホーム背中に中田のインターネットの名称「nakata.net」のロゴを入れる契約(5000万円)に変わりはない。しかし使い道の一部が変わる。「今回のスポンサードは、チームのJ1昇格という最終目標に貢献する形で生かしてほしい」という中田の意向で選手への勝利給になる。「ヒデボーナス」と題して、オーナーのようにポケットマネーで選手の士気を高めようというのだ。

 湘南は基本給を年俸とし、タイトル料金と勝利給をプラスする給与システム。昨季は勝利給が4万円に設定されていたが、今季は中田がさらに4万円を上積みし、倍増の8万円となる。今季就任した湘南の田中孝司監督(45)は「中田は僕がユース監督だった時の代表。非常に感謝しています」と勝利給の増額プランに感謝した。

 この日、選手全員が小長谷喜久男社長(50)を通じて中田の激励コメントを聞いた。「厳しい戦いを前にして、1人1人、胸に秘める強い思いはあるでしょう。とにかく、今年、答えが出なければ何もかも失うという気持ちでぶつかっていけば、結果は必ずついてくるはずです。頑張ってください」。中田と一緒に1996年アトランタ五輪を戦ったDF白井は「すごいですよね。そこまでしてくれるのだから、今年はやらないと。勝利給が上がるということはプロとしてうれしい」と、J1昇格への気持ちをさらに高ぶらせた。

 また中田は「今のベルマーレに一番必要なもの。それはホームタウンからの声援です」と観客動員アップのプランも打ち出した。観戦希望者を募って、中田が買い上げた湘南の試合チケットを年間3000人にプレゼントする。しかもローマから中田自身を差出人とした郵便でシリアルナンバー(観戦証明書)入りの招待状が届けられる。また勝利試合観戦者には中田の直筆サインを入れた湘南レプリカユニホームを1試合につき5枚プレゼントする。小長谷社長は「お客さんや選手を大切にする中田を感じます」と中田のバックアップがJ1昇格への起爆剤となることを信じていた。(金額はいずれも推定)【藤中栄二】

 ★中田「厳しい戦いを前にして、1人1人、胸に秘める強い思いはあるでしょう。とにかく、今年、答えが出なければ何もかも失うという気持ちでぶつかっていけば、結果は必ずついてくるはずです。頑張ってください」

 ◆スポンサー 湘南はユニホームのそでのスポンサーに音楽ソフト制作会社の「リズメディア」、公式戦用練習シャツのスポンサーにアニメ、ゲームなどの企画、制作会社「ブロッコリー」が決定したと発表。

 ◆中田による勝利給支出 湘南の勝利給は試合に出場した選手だけに与えられる。試合時間の75%以上の出場で満額、50〜75%は半額、50%以下は4分の1支給される。ヒデボーナスは1選手につき1勝で4万円。先発11選手と途中交代、途中出場などを含めれば1勝で約50万円になる。4試合増えた今季、J1復帰には44試合で最低30勝は必要。3000席(当日券は2500円)の招待を合わせると、J1昇格となれば中田は総額で約2200万円を投じる概算になる。

※記録と表記は当時のもの