元日本代表監督で、日本協会副会長を務める岡田武史氏(60=FC今治オーナー)がカズの偉業に感服した。50歳Jリーガーとなった教え子について、20代前半から妥協なく練習していた姿を回想。98年W杯フランス大会直前にメンバー落選を告げてから19年後の快挙に「あの時が(現役続行の)理由だとしても50歳まではできない」と規格外の選手寿命に驚いた。

 岡ちゃんがカズについて語った。「50歳って…。普通できないよ、無理だよ、どう考えても(笑い)。本当にすごいこと」。称賛する一方で、少しの予感はあった。「普通は30(歳)近くになって初めて節制しなきゃ、練習しなきゃ、って思い始める。その時には遅い。20代の前半からキチッと取り組んでいた人間が長持ちする。カズはやっていた、ずっと」と明かした。

 岡田氏がコーチから監督に昇格したW杯アジア最終予選の最中、カズは試合当日でも代表宿舎の周りを走っていた。たった1人で。「フラビオ(フィジカルコーチ)のメニューに対しても、最も一生懸命だったのがカズ。当時は抜く選手も多かった中、1つ1つにこだわっていた。絶対に抜かなかった。北沢豪もね」。

 それでも、W杯で勝つために決断しなければならなかった。当時41歳の岡田氏は「FWの柱は城。カズを使う機会はないと判断した」。ギリギリまで待った状態は、最後まで上がってこなかった。98年6月2日、スイス合宿のホテルの部屋にカズを呼んで落選を告げた。25人から22人に絞り、報道陣に「外れるのはカズ、三浦カズ」と発表した。「いまだに言われる」という社会現象になった。

 「カズが現役でいる理由は、あの時W杯に行けなかったから」ともいわれる。だが、岡田氏は「本人じゃないと分からないけど、それが理由だとしても50歳までできる選手はいない。根本は純粋さ、サッカーが好きという気持ち。試合は楽しむものじゃなく、つらいもの。本当に好きじゃないと続かない」と強調した。

 岡田氏は昨夏に還暦を迎え、カズから祝福コメントも届いた。50歳に負けじと挑戦中。今年はJFL初参戦のFC今治で、最短1年でのJ3昇格を目指す。その中でカズに送ったメッセージは「うちがJ2に行くまで待っててくれ」。また同じピッチに立つ日が来ると信じている。【木下淳】