最初のボールタッチは自陣ゴール前。前半5分、相手CKを左足でクリアした。直後のCKも頭で防いだ。後半12分にはゴール前で右足のミドルシュート。同20分まで65分間プレーした。「攻撃に対しては物足りないですが、DF面の連係としては良かった」。中田監督は「後半は僕のルールを無視して点を取りにいくプレーをした。カズが点を取れば世界もサポーターも喜ぶし、取ってほしかった」と苦笑い。守備での貢献も求められているが、最後は得点への渇望が、監督の指示を上回った。体が自然と前へ向いた。

 次節アウェー長崎戦に出場すれば50歳7日。元イングランド代表でサッカー選手の手本とされるスタンリー・マシューズの50歳5日を超える。摂生に努め、警告が1度もなかった伝説の男。カズも似ている。Jリーグで1度も退場はない。今でも、年俸のほとんどは体のために使う。30代の頃から365日態勢で専属トレーナーをつけ、毎食を栄養士に確認してもらってから摂取。練習前後も人一倍ケアの時間に費やす。シーズン中はアウェー試合から横浜に戻ると、深夜でも真っ暗なグラウンドを1人黙々とランニングする。

 試合から1時間後、紫のベストにピンクのスーツでピッチに登場。報道陣からケーキと50本のバラが贈られ、誕生日会が始まった。「体力的なところは正直厳しくなってきているけれどね。その中で技術だとか駆け引きだとか、経験で補えるものはある。目の前の試合に出て、ゴールしたい。それが目標です」。史上初の50歳弾は持ち越したが、大きな活力も得たバースデー白星となった。【鎌田直秀】