大熊監督は「いろいろ迷う部分」と言葉を濁した。だが柏から今季移籍したばかりの下平は、周囲との連係や戦術面でまだかみ合わない部分がある。一方で豊富な運動量を誇る浅利は、東京Vの攻撃の起点となるMF永井のドリブル突破を阻止する役目に向いている。「(相手を)抑えるのは大丈夫。守備は自信あるから」と意欲をみせた。

 前売り券完売もクラブ社員の努力だった。J2に加入した1999年(平11)から、選手も参加する都内全域でのサッカークリニックは年間200回を数えた。ホーム試合開催前には都内で試合告知のビラ配りをしてきた。昨年12月に開幕戦のホーム開催権を抽せんで手にしてからは、さらに力を入れた。今回は「東京ダービー」という話題性も手伝ったが、2年前からファン獲得のためにまいてきた種が、新ホーム開幕戦で前売り券完売という形で表れた。

 永井、三浦淳、前園らを擁する東京Vに比べ、知名度や日本代表実績のある選手は少ない。だが、先に東京をホームタウンにしたプライドがある。「負けたくないね」と浅利。クラブ社員、選手全員の思いが1つになって、東京の21世紀が幕を開ける。

 ◆社員選手 アマチュア以外の選手で、クラブの親会社と雇用契約を結んでいる選手のこと。Jリーグの契約上はプロでもなくアマチュアでもない。JFLからJリーグに昇格してきた東京や川崎Fに社員選手が多かったことで、Jリーグがその「保護策」として認めた。今季のJ1では、浅利のほかに小林成ら東京に5人いるだけ。5人は社員として仕事を持てる権利がある。

※記録と表記は当時のもの