湘南ベルマーレの曹貴裁監督(48)が試合後、会見を行った。

 曹監督は「プレミアムシートで見られるような映画じゃなかった」と、映画に例える独特の言いまわしで試合を評した。主な内容は、以下の通り。

 J1が開催される土曜日に、同じ時刻ではないですけどJ2の試合があり、今年は土曜はJ1、日曜はJ2という形ではないので、試合の内容、結果、興行としてもJ1のチームに負けないような気持ちで今週も臨んだつもり。

 この間の試合(2月26日の水戸ホーリーホックとの開幕戦)もそうですけど、立ち上がりに我々が見せた、映画の1シーンだとしたら、普通は最初に予告があって、早く映画が見たいのにクルクル回る人形が出てきて…というのもなく、最初から本編に入ってきて、引き込まれるような展開に持って行けたと思うし、ファンタスティックなゴールも生まれた。シュートに至ったシーンも含めて、本当に全て、我々らしいシーンでチャンスを作って、得点で、いい試合だったな…と4、5年前なら思っていたでしょうけど。やっぱり、何でもそうだと思うんですけど、ずっと何かをやった時に、うまくいくわけはない。努力をしても成功するわけではないけれど、努力をし続けないと成功はしないって、僕は思っています…当たり前ですけど。その意味では、本編の入り方は良かったけど、途中でゲームが間延びして、ザスパクサツ群馬の勢いにやられた。自分たちが息を吹き返すと、いいゲームをする。選手も変わっているし、初めてJ2を戦う選手もいてプレーに波があるの理解できるけれど、気持ちに波がある。1つミスをすると、リバウンドできないプレーも散見した。今日、本当に面白い映画だったのかな? とお客さんの立場で考えると、プレミアムシートで見られるような映画じゃなかったかなと思っています。はぁ…ちょっと話したくない感じだけど、話すとしたらこんな感じです。

 まぁ、これだけ周りの期待値もある中で、当然、ホーム開幕戦のプレッシャーもあったでしょうし、結果も内容も求められる中、多少はロスがあってもしょうがないかなと思っている自分もいる。課題を持ちながら2試合、勝ち点6で終われたというのは、非常にチームにとってポジティブですし、今日の課題を選手個人で、しっかり反省して、次に望んで欲しい。今年、J2に降格して、僕が監督をしているということを、チームが1つ、成長するためにやらないといけないと思っているので、そのことに向き合い、しっかり作っていきたいなと思います。

 (DF杉岡)大暉とか山根(視来)とか、新しい選手がピッチに立っていますが、ここに(MF神谷)優太とか(斉藤)未月とか(DF石原)広教とか、10代の選手が躍動することが我々の力になりますし、今日ベンチで出なかったシマ(DF島村毅)や最年長のツボ(DF坪井慶介)とかが、その中で若いヤツと同じように汗を流していくということが感動を生むと思いますし、最後まで1ミリもブレないで選手と向き合いながら、あと40試合戦っていきたい。

 -山根選手が3点目の起点になるなど、とても目立っていた。起用法と評価は

 前に方に置いてもセンスないんで。(1月から2月の)スペイン合宿で、それが分かったから、パエリアを食べながら「前は無理だ。後ろをやれ」と言いました。多分、パエリアがその時おいしかったので、本人もおいしさにだまされて、やってみたら結構、面白いじゃんというだけだと思う。あいつはまだ、ゲームの中で、信じられないミスで失点することに、たまたま、まだ絡んでいない。絡んだ後に、どうするかが彼が1番、伸びるポイントだと思っているので。非常にアグレッシブに、よくやってくれていると思う。

 -杉岡選手がJ初ゴール。プレーはどう思うか?

 普通ですね。どうしても新しい選手がゴールを決めると、何となく明日の新聞の紙面を握る、格好のネタだと思いますけど…じゃ、どこを目指すの? と。例えばブンデスリーガで上位にいっているライプチヒやシャルケの(10代の)選手は5万、8万人が入るスタジアムの中で普通にピッチに立っている。ここより、何倍ものプレッシャーの中でプレーしている。成長させるために使っているんじゃなくて、いいから使っているだけなので。彼が点を取ったから、よくやったと、この場であまり言いたくない。点取る、取らないは結果だし、結果が出たからいいとも思わない。彼は毎日の練習と、試合と、それを離れた時間を、常にサッカーに対して、いいものになるように準備しておくのが、彼そのものの評価。代表に入ろうが入るまいが、試合に出ようが出まいが、そこの軸をブラさないことが、彼が最終的にいい選手になるかにつながっていく。1点取ったのは、チームにとっても彼個人としても、すばらしかったが、もっと求めるレベルを上げないと、これで良かったとあいつが思ったら成長の速度は遅くなると思う。

 -ブレーメンとの提携が発表された。監督はブンデスリーガへの視察も多くお好きかと

 僕は個人的に、すごい興味ありますもんね。あらためて(ブンデスリーガが好きだと)言われると何か、あれですけど…ブレーメンの方は、あまり行ってないんで。音楽隊があるの、知ってます? これをきっかけに、行ってみようかと。

 杉岡の初ゴールを評価しつつも、その先の成長のために甘い言葉は言わない。そうした曹監督のスタンスが、湘南から好選手が次々、生まれていくカギだろう。【村上幸将】