劇的に勝った。ベガルタ仙台は18日、アウェーで柏レイソルと対戦し1-0で勝利。クラブJ1通算100勝を決めた。スタートから相手の猛攻を耐えに耐えて、迎えた後半ロスタイム、MF奥埜博亮(27)が右足で決勝弾を放った。チームの倍以上のシュート15本を浴びながらも、少ないチャンスをものにした。4戦3勝で勝ち点9。リーグ再開後の4月から迎える強豪4連戦を前に、最高の形で締めくくった。

 守り抜いた果てに、勝利が飛び込んできた。後半ロスタイム、ファウルをもらったMF金久保順(29)が素早くFKを蹴った。相手DFに取られたが、奥埜が奪い返すと「ボールが来てたので。最後の部分は見ていない」と、とっさに右足を出した。つま先に当たり回転がかかって、GKは反応できず。磐田戦(4日)に続く決勝弾は、クラブJ1通算100勝を決める特別なゴールになった。「そういう大事な試合に点を取れて良かった」と、喜びをかみ締めた。

 根っからの点取り屋だ。大敗したルヴァン杯翌日の16日、奥埜は居残りでMF梁勇基(35)とFK練習をした。「誰もキッカーがいないときの準備しておこうかなぁ」と笑った。アマ時代も含めてキッカーの経験はほとんどない。期限付き移籍先のJ2長崎で1度FKを蹴ったが、全く思ったところにいかなかったという。「自分は合わせるのが得意です。連敗は止めたい」と燃えていた。

 奥埜は「本当に苦しい時間帯でもDFの人が体を張って守ってくれたから」と、守備陣に感謝した。終始、柏MFクリスティアーノらがゴール前に攻めてきたが、3バックを中心に守りきった。後半20分にはクリスティアーノの強力なFKをDF平岡康裕(30)が顔面ブロック。DF石川直樹(31)は「壁が体を張るのは仙台の良さ。平岡のファインプレーでしたよ」とうなずいた。柏が地元の石川直は勝利後、涙を流しながらサポーターにあいさつした。「意味がわからないけど、こみ上げてきたものがある。育ってきたスタジアムで、苦しい中で勝てたし」。直近2試合の公式戦は計8失点だったが、「ここ2、3日で修正できた」と堅守再建に成功。渡辺晋監督(43)は「はい上がろうと選手を送り出した。魂のこもったゲームを見せてくれた」とたたえた。自信は取り戻した。最高の状態で4月からの強豪4連戦に挑む。【秋吉裕介】