「俊輔の後継者」横浜F・マリノスMF斎藤学(27)が、2アシストで新旧10番の初対決を制した。MF中村俊輔(38)が今季から加入したジュビロ磐田を2-1で破り、チームに約1カ月ぶりの白星をもたらした。前半26分にMFマルティノスの先制点、後半28分にDF金井の決勝点を、ともに右足から演出。J1の今季アシストランクでも、単独トップとなる通算5アシストとなった。

 一瞬のすきを逃さなかった。後半28分、斎藤の右足から放たれた放物線は、ゴール前の混戦の中、金井の足元に吸い込まれるように届いた。金井が冷静にゴール左隅に決めると、スタジアムに大歓声がわき起こった。そのまま逃げ切り、ルヴァン杯を含む5試合ぶりの白星。ヒーローインタビューで、斎藤は「サポーターの力が僕らの力になりました。僕らはもっと強くなれる。優勝しましょう!」と力強く宣言し、再び大歓声を呼んだ。

 前半26分には先制点を呼び込んだ。左サイドから切り返し、右足からゴール前にライナー性のクロスを入れた。ゴール前のマルティノスがヘッドで合わせた。この日2つ加えたアシスト数は、今季通算5つ目。4アシストの浦和関根、3アシストの川崎F中村と小林らを抑えて、堂々のJ1単独トップに躍り出た。

 特別な試合だった。「25周年記念試合」と銘打ち、クラブは公式ホームページなどで「超えていく」のキャッチコピーとともに、斎藤を前面に押し出してPRした。「超えていく」ための比較対象は、斎藤が今季背負う「10番」と主将を昨季まで務めた中村俊。それでも「マリノス対ジュビロの戦い」と繰り返し、個人ではなくチームの対戦を強調。意識していないと自らに言い聞かせるように話していた。だが「気にしていないわけがなかった」と打ち明けた。試合後には自ら申し出て、控室前で中村俊とユニホーム交換もした。

 4日に27歳の誕生日を迎え、チームを引っ張る自覚が増していた。この日、チームメートから誕生日プレゼントされたリュックサックで訪れ「負けていたら(縁起が悪く)2度と使えなかった」と笑った。

 「ずっと俊さんの背中を見て育ってきた。俊さんたちから教わった戦う姿勢を若い選手に見せられたと思う」。試合後の斎藤の表情には充実感が漂っていた。【高田文太】