苦しいケガを乗り越え、ついに最高の瞬間を迎えた。ベガルタ仙台はホームで清水エスパルスを3-1で破った。MF椎橋慧也(19)のプロ初ゴールが決勝点となった。数的優位に立った後半1分にMF三田啓貴(26)のゴールで同点とすると、同23分に椎橋がヘッドで決勝弾。プロ1年目の16年1月に右足関節内踝(くるぶし)を骨折。合流は同年9月と遅れて、苦汁をなめた男が、輝きを放った。仙台は2位に浮上した。

 鮮やかなVゴールだった。1-1で迎えた後半23分。MF三田がファーサイドに放ったFKに、椎橋は頭で合わせた。値千金のプロ初ゴール。FWクリスラン(25)に抱きかかえられた。「去年ケガでサッカーを離れていた。今年こそという思いで、勝利に貢献しようと思って臨んでいた」と振り返った。

 プロ1年目の昨年1月に負傷。スタンドで試合観戦が続いた。「出だしは失敗したな」。リハビリの時期、支えてくれたのはチームメートだった。自身もケガに苦しんだDF蜂須賀から「パワーアップして戻ってくるのが大事だ」とエールを受け、乗り越えられた。蜂須賀は「神様は見ていた」と喜んだ。

 プロ初先発の緊張は、市船橋の恩師や仲間が消し飛ばしてくれた。高校時代、緊張の原因を朝岡隆蔵監督に尋ねた。返事は「下手なやつが準備もしないでできると過信するからダメなんだ」。恩師の言葉を胸に刻み、「僕は緊張しないのでやることをイメージしてゲームをつくれた」と思う存分プレー。試合前には同校の友達から昔話を聞き、和むことができた。

 ホームのピッチに立った際、「1年前はスタンドで見ていたのに」と感極まった。プレーできる喜びを表現して、つかんだ最高の舞台。だが今日だけにとどめる気はない。「点はたまたま。守備の課題を修正しないと。明日から準備したい」と、30日のアウェー清水戦を見据えた。【秋吉裕介】

 ◆椎橋慧也(しいはし・けいや)1997年(平9)6月20日生まれ、千葉県出身。市船橋では15年総体準優勝、選手権にも出場した。本職はボランチ。球際の強さと献身的なプレーが持ち味。177センチ、69キロ。