J2ジェフユナイテッド千葉が公式応援ソング「WIN BY ALL!」を完成させ、11日のレノファ山口戦でお披露目した。

 制作は今春からスタートした。5月24日から6月9日まで、公式サイトで「公式応援ソングに入れて欲しい言葉」を募集し、その中から一部を使用して作詞家SACHIが作詞し、浜崎あゆみ、Every Little Thing、MAXらのコンポーザーを務めたDJ Somaを中心としたチーム「Grow Sound」が楽曲をプロデュースした。

 そして投票が最も多かった言葉「WIN BY ALL!」をタイトルとして完成した。「WIN-」はホームタウンの市原市と千葉市、サポーターとともにフェアプレーに徹し、勝利にこだわり、全員の力で勝つという、クラブの精神を表すキーワードでもある。

 お披露目で「WIN-」を歌ったのは、11年に結成されたクラブ公式プロモーションチーム「アキュアマーメイド」だ。メンバー7人は女優やタレントで、普段は個々に芸能活動を行っているが、ホーム戦の際にフクダ電子アリーナに集まって応援活動を展開。お披露目の際は、歌って踊る7人にサポーターが声援を送り、ゴール裏は一体となった。メンバーの三井里菜(19)は「皆さんがすごく拍手をくださり涙が出てきました」と感極まった。

 芸能人がゲストで登場し、試合を盛り上げるイベントはJリーグ各会場で行われている。クラブがチアリーディングチームを結成したり、公式に応援する芸能人を認定するケースもあるが、芸能人で公式応援チームを組み、公式応援ソングまで歌うケースは異例だ。

 “仕掛け人“は、千葉の経営企画部広報グループの前田信治マネジャーだ。前田さんはアキュアマーメイド立ち上げのほか、サッカー映画「U-31」(16年)の製作サイドから協力を依頼された際も全面協力の実現に動き、クラブは映画の題材となった。応援ソングも「アキュアマーメイドに相談したのは3年前くらい。その前から計画はしていました」という。

 サッカーと芸能という、全く異なるジャンルのコラボ企画を次々、展開する狙いについて、前田さんは「スポーツと芸能はエンターテインメント。楽しんでもらうのが1番大事。ファン層を広げるきっかけになると思うし、広げていけば、もっとサッカーが好きな人が増える。いろいろな楽しさをスタジアムで味わってほしい」と強調した。

 発想の源泉は異色のキャリアだ。前田さんは大学卒業後、大手芸能事務所に入社し大物女優や歌手のマネジャーを務めた。その後、飲食系を経て09年に千葉に入社。同年に千葉は前身の古河電工サッカー部時代を含めて初の2部降格を味わった。その中「音楽はコンサートに行けば、みんな満足するけれど、サッカー場に来て全員が満足して帰るとは限らない。勝ち負けじゃないところにも楽しみを感じてもらいたい」と考え、それがアキュアマーメイドの結成につながった。

 一方で、知名度の低い若手を中心に結成されたアキュアマーメイドに対して「うちの活動でサポーターから元気をもらって個々の次の活動につなげてほしい」と期待している。「得意なダンスや歌でクラブを盛り上げたい」というメンバーの強い思いを感じたことも、公式応援ソングを作る1つのきっかけとなった。

 アキュアマーメイドのメンバーも、「WIN-」のお披露目を喜んでいる。吉岡由梨子(26)は「私も歌って踊りたい気持ちがあって…でも、なかなか進めなくて。サポーターさんの目の前で歌った時、皆さんのおかげで今、活動できていると思った。みんなでJ1にいけるように高めていきたい」と、千葉での活動が自身の芸能活動の励みになっていると語った。

 メンバーが個々に芸能活動をしているため、7人で勢ぞろいできない時もある。そのため、サポーターへの周知が進まない時もあった。ホーム戦で負けると「マーメイドがいるから負ける」とサポーターから言われたこともあったという。

 お披露目当日の山口戦には7人全員がそろい、後半ロスタイム3分のFW清武功暉(26)の劇的な決勝ヘッドで2-1で勝った。また5-0で大勝した5月13日のV・ファーレン長崎戦も、7人全員で応援した。今季のリーグ戦は、ホームで8勝5分けと無敗をキープしている。ただ1人、立ち上げから活動しているリーダー池見典子(28)は「7人集まったら勝利の女神になるということがJリーグ全体に届くようにしたい」と胸を張った。

 その言葉を聞いた前田さんは「チームも、スタッフも、サポーターも、マーメイドも、全部が1つになれないとJ1には上がれないんですよ」と力説した。公式応援ソングでチームが勇気づけられ、歌うアキュアマーメイドも成長する。スタジアムから、サッカーと芸能2つの夢が生まれ、化学反応を起こしたその先に、悲願のJ1復帰が待っていると、前田さんも、アキュアマーメイドも信じている。【村上幸将】