湘南ベルマーレの曹貴裁監督(48)が18年も続投し、7季目の指揮を執ることが24日、分かった。25日にも発表される。

 曹監督は12年にコーチから監督に昇格し、クラブを同年と14年、今季と3度、J1昇格に導き、今季は14年以来、2度目のJ2優勝を成し遂げた。その間、圧倒的な走力を軸に、局面で相手を上回り、一気呵成(かせい)に縦に速く攻める“湘南スタイル”を確立。並行して主力が引き抜かれる中、若い選手を鍛え抜き、DF遠藤航(24=現浦和レッズ)、MF永木亮太(29=現鹿島アントラーズ)を日本代表にまで成長させるなど、育成手腕を高く評価されてきた。

 今季も、下部組織から生え抜きのMF菊池大介(26)が浦和、DF三竿雄斗(26)が鹿島アントラーズに移籍。14年の昇格を経験したメンバーで残ったのはMF菊地俊介(26)、FC東京から2年ぶりに復帰したGK秋元陽太(30)、MF藤田征也(30)、DF島村毅(32)らしかおらず、開幕直後から「0からのスタート」を掲げた。

 その中、2年連続で主将を務めたFW高山薫(29)が、3月25日のジェフユナイテッド千葉戦で右ひざを故障。前十字靱帯(じんたい)を損傷で全治8カ月の重傷を負い、開幕からわずか5試合で戦線を離脱。さらに高山から主将を引き継いだ菊地も、5月27日のモンテディオ山形戦後、右太ももの違和感から戦列を離れ、9月30後のツエーゲン金沢戦で復帰まで4カ月もかかるなど大黒柱2人が離脱。苦境に立たされながら、柏レイソルから移籍したMF秋野央樹(23)ら新戦力を鍛え抜き、7月8日の第22節・大分トリニータ戦以降、首位を譲らなかった。

 クラブ側は続投が基本路線だったが、曹監督は10月28日にアビスパ福岡が東京ヴェルディに引き分け、1年でのJ1復帰が決まった際に「もう1回、このチームを最初から率いろと言われたら、本当に無理だなと思うくらいエネルギーは使い果たした」と発言。優勝を決めた10月29日のファジアーノ岡山戦後の会見でも「来年のことは本当に全然、考えていない。自分も本当にフルパワーを使ってやってきた。何月何日に始まって、どこにキャンプに行って、どこと開幕戦に当たると考えることは今、正直できない」と去就について白紙を強調した。

 一方で、同じ岡山戦後の会見で「このクラブを何とかしたいという気持ちは、僕は恐らく人よりは強いと思う」と語るなど、湘南への熱く、深い愛情をのぞかせた。さらに「選手を見ていると、何が何でも勝つという気持ちが今年は強かった。勝つためには最後に体を張って、血と泥だらけになることが必要…自分の中で、そこから逃げていると感じた。今年が1番、監督をやっていて勉強になりました」と、自身の監督人生にとって、今季のチームが特別なものだったことも示唆した。

 J1定着、さらにその上を目指すクラブの続投要請を、悩み抜いた末に受ける決断をした裏には、まだ湘南でやることがあるという思いが、クラブの思いと一致したからとみられる。曹監督は19日の最終節・町田ゼルビア戦後の会見で「初めて監督になった12年に比べて(ホーム)BMWスタジアムの雰囲気は、やっている選手たち、見ている観客の温度が一緒というシーンが多かった。今年はサッカー文化は間違いなくこの街に根付いた気がした。この街を取り巻く文化は5~10年で上がった」と語った。

 その上で「目指すなら一番上…そういうところと向き合って行かなきゃと強く感じたのは今年が1番です」とも語った。0から作り上げた17年のチームとともに、曹監督は18年も、ともに戦う決意を固めた。