東京ヴェルディの18歳ルーキーFW藤本寛也が、開幕スタメンでJリーグデビューし、チームの勝利に大きく貢献した。

 藤本は3トップの右で先発し開始早々、躍動した。右サイドに張り、手を上げてボールを要求。ボールを受けるとカットインして、利き足の左足から繰り出す正確なパスで攻撃を組み立て、自らゴール前に顔を出してシュートも放った。

 最初の見せ場は、前半8分に訪れた。自陣深い位置から前線へ走るFWドウグラス・ヴィエイラ(30)に向かって、30メートル強の距離がある中、1発でスルーパスを通した。「後ろからボールを受けて前を見たら、ドウグラス選手が走っていた。センターDFとサイドDFの間にスペースが見えた。そこに強いボールを出そうと思って蹴った」。ヴィエイラがパスを受けて抜け出そうとすると、背後から千葉DF増嶋竜也(32)に押し倒され、増嶋は1発退場となり、数的に1人、優位となった。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督も「退場のシーンが試合の結果に大きな影響を及ぼした」と認めたように、試合の流れをグッと引き寄せた大きな場面を生み出した。藤本は「スペースに落とそうと思ったら(ヴィエイラが)いいトラップをして、ゴールに向かった。思った通りではないですけど、狙いがうまくはまった」と手応えを口にした。

 開幕スタメンは目標だったが、1月の沖縄キャンプ中に右太もも裏の筋肉を痛め約2週間、離脱した。キャンプ後の練習に合流し、練習試合などで起用される中で「出る立ち位置なのは分かってきた。途中から、スタメンで出るかなという感じだったので、うまく気持ちを切り替え、この場所でいいプレーが出来るように日々、練習してきた」という。そして前日24日の練習の際、ロティーナ監督から開幕スタメンを言い渡された。

 この日はシュートもチームで2番目の3本、放ち後半28分に途中交代した。輝きを放ったデビュー戦だったが「自分としてもJリーグの試合に出るのは初めて。緊張はあまりしなかったですけど、感覚的に普段、やっている時とは違った。もっといいプレーが出来れば良かった。自分としては90分、常にいいプレーを出来るように、自分が1番、存在感のあるプレーを意識しているので、今日の出来としては納得いっていないんで。随所、随所ではなく、常にいいプレーをしたい」と反省した。

 視線の先には、20年東京五輪がある。14年にU-15(15歳以下)日本代表に選出されて以降、各年代の日本代表に選出され続けた。17年にU-18日本代表入りしており、18年はU-19日本代表として、10月18日からのAFC U-19選手権(インドネシア)で、U-20ワールドカップ2019への出場権獲得に挑む1年となるが、「最終予選もあるんですけど、1つ飛び級でドンドン、上がっていくのが目標」と言い切った。東京のクラブであるヴェルディから東京五輪を目指したいかと聞かれると「はい」と即答した。

 東京Vでは、この日先発した1つ上の先輩MF渡辺皓太(19)と、この日、自身と交代してピッチに入った2つ上の先輩MF井上潮音(20)が、東京五輪を目指せる位置にいる。藤本は「皓太君、潮音君がいるので(東京五輪に)出られるチャンスはある。1人でも多く、自分たちがドンドン出て行って活躍できれば、幅も広がるのでいいと思う。東京五輪という近い目標を飛び越えてもA代表に入っていけたらいい」。クラブのスポンサーでもある、中央高等学院の通信制を今春、卒業する藤本の視線は、大きな未来を見据えている。【村上幸将】