川崎フロンターレが、MF中村憲剛(37)の2年ぶりマルチ得点などで清水エスパルスに3-0と快勝した。川崎市在住で縁の深かった歌手の西城秀樹さんが、16日に63歳の若さで死去。喪章を着けて戦った一戦で恩人に勝利をささげるとともに、チームも3位に浮上した。リーグ戦はワールドカップ・ロシア大会へ向けて中断し、7月18日に再開する。

 前半19分、ゴール正面25メートルの好位置で得たフリーキック。中村は蹴る際、不思議な感覚に包まれた。ボールを置いた瞬間に「入る」という予感を抱いた。

 「たまにあるんですよね、何か降りてきたというか…」

 「壁を越えれば入る」と迷うことなく右足を振り抜いた。相手GKが1歩も動けず、ゴール右上に突き刺さり先制点。後半12分には、敵陣深くで清水MF河井へプレスをかけてボールを奪い、追加点を挙げた。

 2年ぶり5度目のマルチ得点に「16年やっていて(複数得点は)なかなかない。ひょっとしたら(西城さんが)取らせてくれたのかなと。導いてくれたと思う」としみじみ語った。ホームでは4月21日の鹿島戦を最後に白星から遠ざかり、2試合連続無得点で2連敗中だった。中村は「ここで3連敗はあってはいけないこと。等々力でこれ以上負けるのはありえない」と強い覚悟を持ってピッチに立っていた。

 西城さんは04年から毎年7月、ホームでの「川崎市制記念試合」に出演し、ヒット曲「ヤングマン」を歌いスタジアムを盛り上げてくれた功労者だった。キックオフ前に黙とうをささげ、腕に喪章を着けてプレー。サポーターも寄せ書きの横断幕を掲げた。中村は「勝ちを報告できたのはうれしいです」と話し、サポーターの前で「YMCA」のポーズを取り、西城さんへの感謝を示した。

 J1通算419試合出場となり、大卒選手では藤田俊哉氏に並び1位タイ。「そこでまた2点取れている。まだやれると見せたい」。年齢にあらがい成長を続ける中村。その上昇気流はまだまだやみそうにない。【岩田千代巳】

 ▼J1年長マルチゴール 川崎F中村が、20日の清水戦で2得点。37歳6カ月20日での1試合2得点以上は、鹿島MFジーコの41歳3カ月8日、清水MFサントスの37歳9カ月3日に次いで歴代3位の年長記録。日本人選手では最年長記録で、浦和MF阿部の35歳9カ月12日を更新。