スペイン1部バルセロナを退団したスペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(34)が24日、J1ヴィッセル神戸に完全移籍した。同日、都内で行われた会見で発表された。

 黒のジャケットに白のTシャツとラフな姿で登場したイニエスタは壇上で契約書にサイン。Jリーグでの印象を語り始めた。

 イニエスタ 日本のサッカーをリスペクトしている。Jリーグも良く知っている。高いレベルにあると思っている

 イニエスタは8歳でアルバセテ(現スペイン2部)の下部組織に加入し、12歳だった96年にバルセロナの育成組織の寮「ラ・マシア」に入寮。18歳だった2002年10月29日、欧州チャンピオンズリーグ(CL)1次リーグ・クラブ・ブルージュ(ベルギー)戦でトップデビューを果たし、ラストゲームとなった5月20日の最終節レアル・ソシエダ戦まで22年、バルセロナでプレー。公式戦674試合に出場し、55ゴールを決めた。

 17年10月6日には終身契約まで結んでいたが、4月27日にバルセロナで会見を開き、今季限りでの退団を発表した。会見では「今季が、ここでの最後のシーズンになる。チームメートに感謝したい。バルサは私に全てをくれた」と涙ながらに語った。

 有力な移籍先として、神戸のほか、中国スーパーリーグの重慶力帆の名も報じられていたが、神戸入りを決断。レアル・ソシエダ戦後、フランス・パリのディズニーランドを妻のアンナさんと3人の子どもと訪問。同日、楽天の三木谷浩史会長兼社長(53)とのツーショット写真を公開し、神戸入りを初めて自ら公表した。

 スペイン代表は2006年(平18)5月27日の親善試合ロシア戦でフル代表デビューし、ワールドカップに同年のドイツ大会から3大会連続で出場。今夏のロシア大会代表メンバーにも選ばれ、4大会連続での出場が決まっている。欧州選手権も08、12年に制した。代表としては125試合に出場し、13ゴールを決めている。

 神戸の親会社・楽天は、17年にバルセロナのメイングローバルスポンサーとなるなど関係は深い。楽天は会見で報道陣に配布した資料の中で、イニエスタについて「バルサの哲学とDNAを誰よりも色濃く受け継ぐ選手です。バルサは他のクラブとは一線を画し、『カンテラ』と呼ばれる下部組織で若手を手厚く育成してきた伝統を持ちます。同選手も1996年にカンテラに入り、2002年以来、FCバルセロナで世界的トッププレイヤーとして活躍し続けてきました」と紹介した。

 その上で「今回のヴィッセル神戸へのイニエスタ選手加入は、チーム全体にとって大きな刺激になり、今後、ユース年代向けのアカデミーへのメソッド導入を含め、次世代の育成にも寄与していくものと考えています」と、神戸の育成組織の質の向上、言うなれば“バルサ化”への効果にも期待しているとした。

 そして「ヴィッセル神戸はアジアナンバー1のクラブになることを目指すとともに、同選手の加入が、日本のみならずアジア全体のサッカーの活性化にもつながるものと期待しています」とイニエスタを軸としたアジア制覇の野望までつづった。

 また動画配信サービス「Rakuten TV」をはじめとする「楽天エコシステム(経済圏)」のさまざまなチャンネルを通じて日本の国内外に発信し、神戸をJリーグの注目を高めていきたいとしている。

 26日午前10時から、ノエビアスタジアム神戸でウエルカムイベントを行うことも併せて発表した。【村上幸将】