浦和レッズMF柏木陽介(30)は、J2ヴァンフォーレ甲府にJ2勢では17年ぶりの8強進出を許した試合後、自らにダメ出しした上で、17年7月に成績不振から解任され、現在は北海道コンサドーレ札幌の指揮を執るミハイロ・ペトロビッチ元監督のサッカーからの転換が、いまだ出来ていないチームの現状を吐露した。

 柏木は故障で、アウェーで甲府に0-2で7年ぶりに敗れたプレーオフ初戦を欠場し、6日の天皇杯2回戦のJ3Y.S.S.C横浜戦で復帰し、この日も1点を追う後半からピッチに立った。時折、攻撃のチャンスを作るも、決定機を生み出せず「何も変えられなかった。少し流れが変わったって、思っている人がいるかも知れないけれど、自分の中で、それだけでは全く意味がない仕事。ゴールを決めていく、絡んでいくのが自分の仕事。出来なかった」と自らにダメ出した。

 その上で「シンプルな出し入れがチームに足りない」とチームの戦い方に苦言を呈した。具体的には「出し入れの中から裏に出て行く。危ないバックパスになった瞬間、センターバックが蹴るやろうなと思っても、走っていない状況がうちの選手は多い。前半は(興梠)慎三が裏を狙って頑張って点につながった。でも慎三1人だけじゃ無理」と説明した。

 この日、甲府は5バック気味に守っていた。柏木は「相手が、しっかりブロックを作っている中で、そのポジション、ポジションでの動きでは、なかなか厳しい。俺が持っちゃうと、みんな裏を狙う」と、他の選手のプレー、動きがワンパターンな形でオートマティズムだと指摘。「何か、考えながらやり過ぎている。もっと本能的に思った動きをすればいいと思う」と声を大にして言うと、柏木の苦言は止まらなかった。

 その中で2度、口にしたのが、ペトロビッチ元監督のサッカーに、多くの選手がとらわれたままだ、ということだった。

 「1人1人の選手を見ながら、プレーしていくのが大事。ミシャ(ペトロビッチ元監督)の時、ある程度、ここに誰かがいるというサッカーをやっていた。今はそうじゃないわけやから、1人1人が考えてプレーしていくことが必要」

 「実際、イージーなミスが多いよと、俺が見ていても思う。もっと簡単に止めて、蹴る。1タッチでいかな、あかんという気持ちが強すぎる選手がいるけれど、ミシャの時は、ある程度(選手が)ここにいるからつながった。今は無理があったら止めて、相手が寄って来たら簡単に1個かわせば、外せるよと。ガシャガシャガシャガシャ、一生懸命なのは本当に伝わるし、やっている選手は勝ちたい。そうじゃなくて、やっぱり冷静に今の状況、サッカーを考えてプレーすることを1人1人、理解し、バランスを考えて戦う」

 攻撃のコンビネーションなどを細かく決めていた、ペトロビッチ元監督はもういない。その中、全員攻撃、全員守備をシンプルに、愚直なまでに貫く甲府に、まさかの敗戦を喫した。柏木は「みんなで守備して攻撃していかないと、チームは強くならないし、やっぱり、そこが出来ているチームが強いチームだと思うんで。だから、甲府は全員で守備、攻撃…本当に1人1人が出来ている。こっちはミスをしたら、そこ、守備頑張れよと人のせいに…もちろん、していない選手もいるけれども、そこを超えていかないといけない」と言い、表情を険しくした。

 そして「この1週間の3試合で、なかなかうまくいかなかった。やっている選手も(サポーターの)ため息が聞こえてきたりで、プレッシャーになっている面はあると思うけれど、それは乗り越えていかないといけない。球際に行かない選手は、出ない方がいいと思ってるし、俺は…」と精神面の強化の必要性を強調した。【村上幸将】