前代未聞の「PK戦やり直し」は、1度は敗退した名古屋グランパスがJ1の意地で奈良クラブ(JFL、奈良代表)に勝利し、11日のサンフレッチェ広島との3回戦に進んだ。

 天皇杯2回戦、名古屋-奈良のPK戦やり直しは28日、名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで行われ、サドンデスに持ち込まれた末、名古屋が7-6で勝った。名古屋は1人ずつ失敗して迎えた8人目のMF八反田康平(28)がゴール中央に決めた。一方奈良はMF山田晃平(29)のキックがゴール右上に外れた。

 6日に行われた試合では1-1で延長でも決着がつかず、奈良がPK戦5-4で勝利していた。しかし翌日、試合を見ていた審判員資格を持つというファンからの電話で、PK戦のルール適用に関する間違いを指摘された日本サッカー協会は、過去に例のないPK戦のやり直しを決定し、22日後のこの日に実施された。

 一昨年なら、11日の試合は奈良クラブの勝利で終わる試合だった。90分+延長30分でも1-1で決着がつかず、PK戦に突入した。先に蹴ったのは奈良クラブ。3番目のキッカーが失敗し、2-4で迎えた4番目のキッカー金久保は助走から左足で2度ケンケンし、右足でゴールを決めた。清水主審は笛を吹き、フェイントと判断し、やり直しを命じた。金久保は2度目のキックも決め、名古屋はその後、2人連続で失敗。6人目のキッカーで勝負が付き、奈良クラブが3回戦に進出した。

 しかし翌日、1本の電話が、日本協会の審判部にかかってきた。「3級審判員の資格を持っている」と名乗ったファンから「あの場面はキック失敗で終わるのでは?」との指摘があった。審判部で検討し、臨時の天皇杯実施委員会が招集された。FIFAのルール変更で、昨シーズンから、審判がフェイントと判断した場合、そのPKは失敗と見なすことになっていた。新ルールなら、奈良クラブ4人目の金久保は失敗となり、その時点で名古屋の突破が決まるはずだった。

 天皇杯実施委員会は国際サッカー評議会(IFAB)に複数回問い合わせをした上で会議を開き、<1>名古屋の勝ち<2>PKからやり直し<3>奈良クラブの勝ちの3パターンで議論。PK戦の最初からのやり直しで最終決定。両クラブに即座に伝え、了承を得ていた。