ベルギー1部セルクル・ブリュージュへ移籍する日本代表DF植田直通(23)が14日、鹿島アントラーズで最後の練習を終えた。

 特別なセレモニーなどはなし。コートを小さくした11対11の試合などを“普通に”こなして「いつも通りでしたね。いつもの鹿島だなぁと思ったし、こうやってみんなと最後に試合もできて、良かった」と笑顔で仲間と別れを告げた。

 鹿島で5年半を過ごした。勝利が求められた鹿島でのプレー。引き分けでは許されない気質。「ほかのクラブを経験していないから分からないですけど、僕の中ではこれが当たり前。でも『鹿島は違う』というのも聞こえる。そこが何かは分からないので今回、外に出てみて分かることがあるかもしれない。こんなに環境が整っていて、やりやすいところはないと思う。本当に鹿島に入れて良かったと、自信を持って言える。本当に感謝したいです」と話した。

 まず、ベルギーに行く。最初の海外移籍。それがどこの国、どこのリーグかは気にしていなかった。「そんなにこだわりはない。センターバックというポジション柄、外に出なければ見てもらえないポジション。まずは外に行くことが大事だと思うので」。

 ドイツで7年半過ごした鹿島の先輩DF内田篤人は強調した。「ナオの場合…俺もそう思うけど、ベルギーがゴールじゃないから。『ベルギーに移籍した。やった!』で終わりじゃない。ベルギーの次の次とか…その次だからね、本当にたどり着かなきゃいけないところは」。これには植田も同調し、ベルギー移籍がゴールだとは「全く思っていない」と言った。そう、これは始まりに過ぎない。

 通訳はつけない予定。理不尽な場面に遭遇することもあるだろう。それも分かっている。「海外では自分の当たり前が当たり前じゃなくなると思う。海外ではそういったところに慣れないと絶対ダメ。ちょっとしたところでいらつかず『そんな感じなんだ』ぐらいで受け止めておけば問題ない」。

 W杯の代表に選ばれて、ベンチにも座った。雰囲気も味わった。だが、身をもって感じた経験は全て、ピッチの外でのものだった。その悔しさが癒えないうちに決断した移籍。癒やしてからでは遅かったに違いない。「このチャンスを僕はモノにしたい」。大量に所有していたマンガ本も関係者に託した。飢えた状態で、チャレンジの旅に出る。