鹿島アントラーズが、土壇場で追いついて引き分けた。それは、美しい同点ゴールだった。

 点を奪い合うシーソーゲーム。後半24分にMF安部裕葵の今季初ゴールで勝ち越しながら、同32、37分に立て続けにゴールを許して逆転された。だが、リーグ再開前の鹿島とは、ここからが違った。

 MF三竿健斗の縦パスを、FW土居聖真が右足のアウトサイドでフリック。それを受けたFW鈴木優磨が、右サイドのFW山口一真にスルーパスを出した。このとき、土居はゴール前に突進する。山口の右からの低く、速いクロスに飛び込んだのが土居だった。2-3で1点を追う後半43分。まさに終了間際。これには磐田の名波浩監督も「アントラーズがいいときにやるゴールシーン。美しかった」と手放しで相手をたたえたほどだった。

 昨季最終節で引き分けて優勝を逃した敵地ヤマハスタジアム。試合開始前から水を飲むに行く選手が多数いるほど蒸し暑い中で、思いは強かった。日本代表のDF植田直通がベルギーに移籍し、DF昌子源は体調不良で遠征メンバーからも外れた。苦しい台所事情の中で前半17分に先制を許したが、選手の連動は中断前にはないものだった。土居は「内容はめちゃくちゃ良かった。もったいないというか…」と悔しがったほど、内容は悪くなかった。1試合で3得点を挙げたのは今季チーム最多。攻撃力に光は見えた。

 「いい流れはできている。得点できる機会も続いているし、攻撃面はできている。これを続けていきたい」。土居の言葉には、チーム全体の手応えがにじんでいた。