前年王者の川崎フロンターレが、エースFW小林悠(30)の2発で首位サンフレッチェ広島に逆転勝ちし、勝ち点差を6に縮めた。堅守の相手に先制を許す展開も、小林が後半18分に同点弾、同32分にPKを決めた。小林は今季11得点となり3年連続2ケタ得点を達成。川崎Fは台風の影響で広島より1試合消化が少なく、連覇が射程圏に入ってきた。

 自らの得点でチームを勝利に導く-。小林の信念が首位相手の逆転劇につながった。後半11分、得点ランクトップを走る広島FWパトリックに先制点を許した。昨季得点王の小林は「逆に自分もという気持ちになって燃えた」という。後半18分、DFエウシーニョの横パスを右足で流し込むと、後半32分には相手DFのハンドで得たPKを決めた。

 決めるか決めないかで戦況を大きく変えるPKキッカー。MF家長の「外しても同点だし、リラックスしていこう」との声で緊張が解けた。PKは昨年4月のC大阪戦で外して以降「外れたら子供のせいにしちゃおう」と、4歳の長男に事前に電話で「右」「左」「真ん中」を選んでもらい蹴るようになった。この日の“お告げ”は左。蹴る前に「左に蹴ったら止められそうな気がした」と嫌な予感がよぎったが「変えて止められたら一番嫌」と気持ちを込めて強く打った。小林の気持ちが勝り、GKの手をはじいて勝ち越し弾。「読まれてましたけど入って良かった」と苦笑した。

 昨季は9月に鹿島と最大8差広げられたが、白星を積み上げ逆転Vにつなげた。今回の広島戦も、負ければ連覇の道が厳しくなる一戦だった。小林は「失点して崩れなかったところ、最後の試合運び、優勝した経験が生きたと思う」と振り返る。序盤は相手の激しいプレスに苦戦を強いられた。小林も「攻撃の組み立てに参加しよう」と中盤に下りようと思ったが、MF中村に「自分たちが前に運ぶから、お前はゴール前で自分の仕事をしろ」とエースの役目を託された。仲間の思いを一身に受け止めての2得点。3年連続で2ケタの大台に乗せ「仲間が運んできたおかげ。残りの試合も、最後の所でしっかり勝負したい」と頼もしかった。【岩田千代巳】