湘南ベルマーレが柏レイソルとの延長、PKの死闘を制し、クラブ史上初の決勝進出を果たした。

第1戦は柏のホームで1-1。第2戦は湘南のホームで90分終了時で1-1。勝負は延長戦にもつれたが、延長戦でも勝負はつかず、PK戦に突入した。

PK戦のゴールは、湘南サポーターに囲まれたスタンド側だった。湘南が先攻、柏が後攻。曹貴裁監督は「PKの順番は僕が決めました」。

1番は20歳のDF杉岡大暉。2番はFW山崎凌吾。2人続けて成功したが、3番目のMF梅崎司(31)が左上に大きく外した。梅崎は今季、常勝軍団の浦和レッズから自身の成長を掲げ湘南に加入。勝者のメンタリティーを持つ男は「絶対に自分が落胆してはいけない」と、失敗後も下を向くことなく、気丈に仲間の元へ戻った。

湘南の4番目のキッカーは大卒1年目のDF坂圭祐(23)。「梅崎さんが外してくれて、逆に気持ちが楽になった」と振り返る肝っ玉ルーキーは、ゴール右隅に突き刺す。

梅崎は祈るだけだった。柏は4人目のキッカーのFW江坂任(26)がバーに当て失敗。これで4-4とタイに。湘南はMF金子大毅(20)、FW高山薫(30)が続けて成功。柏は最後、延長戦で同点弾を決めたFW山崎亮平(29)が蹴ったが、枠の外に大きく外れた。湘南の決勝進出が決まった瞬間、梅崎は涙を止めることができなかった。

試合後、曹貴裁監督は「想像できなかったファイナルが、現実になった。心の底から嬉しい。サポーターの方におめでとうと言いたい」と感慨深げに語った。PKについては「3番の司(梅崎)が外す予感はしていた」と冗談交じりに振り返った。

一方の梅崎は「恥ずかしいですが、外してね…。本当にどうなるかという思いになりましたし。その中でサポーター、仲間が助けてくれた。ゴール裏の後押し、スタジアムの一体感がなければ、相手も外すことはなかったと思う。本当に、仲間に恵まれたと感じた瞬間でした」と声を詰まらせた。

曹貴裁監督の“予言”については「メンタルが弱いんでしょうね…」と苦笑。「散々、練習で決めてたんですけど。緊張しなかったんですけど、120分戦って疲れていたのか、軸足が踏み込めてなかったのか…。結果的に自分のメンタルが弱いということです」と話した。

湘南に加入して1年目。開幕直後はけがで出遅れたが、ルヴァン杯のグループリーグを通して走る湘南スタイルへのフィットを遂げていった。7月からはコンスタントにリーグ戦でも先発を務める。前戦で必死にボールを追い、好機では後方から組み立てゴール前へ顔を出す。今やチームに欠かせない存在となり、若手が多い湘南を、自身の“故郷”でもある埼玉スタジアムの決勝の舞台へと導いた。

湘南のユニホームを着ての“凱旋”に「絵になりますね」と笑い「成長した姿を見せたい。ベルマーレに来て、躍動感増して、いい選手になったなと思われるプレーを見せたい」。

浦和レッズ時代はACL、ルヴァンは制覇したが、リーグでは何度も2位を経験した。それだけに「優勝しないと得られないものがたくさんある。僕は何度もレッズ時代に痛感している。2位ではだめ。その思いはこのチームでは絶対に負けない。僕が引っ張って見せていかないととずっと思っていた。クラブ自体が大きく変貌を遂げるビッグチャンス。みんなで手にしたい」。

若手選手が育っては、どんどん他のビッグクラブに引き抜かれ、J1とJ2の昇格、降格を繰り返してきた湘南が、タイトルを目指し、埼玉スタジアムで横浜F・マリノスと対戦する。