浜松開誠館(静岡)が2-1で静岡学園を撃破し、創部14年目で初優勝を飾った。静岡県西部地区からは、1977年(昭52)の浜名以来41年ぶりの王者が誕生した。史上13校目の「県代表校」として臨む全国高校サッカー選手権(12月30日開幕)の組み合わせ抽選会は、明日19日に行われる。

浜松開誠館が静岡県高校サッカーの歴史を変えた。試合終了の笛が鳴ると、選手の多くが倒れ込んだ。ベンチ前では、青嶋文明監督(50)が涙を浮かべ、スタッフたちと抱き合った。

セットプレー2発で、今大会無失点の相手を沈めた。前半26分、サインプレーが決まった。左CKの前、ペナルティーエリアのライン前後に選手たちが集結。キッカーのMF川畑陸(3年)が助走に入ると、散り散りに走りだした。マンマークを敷く相手を混乱させ、ファーサイドでフリーになっていたDF山田梨功(3年)が、頭で決めた。「合わせるだけだったので、キッカーに感謝です」。

1-0の後半3分、川畑が左サイドからFKを右足でゴール前に送った。ニアサイドに鋭く曲がり落ちるボールに、FW岡島温希(3年)とMF吉田真那斗(2年)が飛び込んだ。クリアを急いだ相手の足に当たり、オウンゴールを誘発。川畑は「ゴールに向かう、狙い通りのボールを蹴れました」と胸を張った。

同17分に1点を返されると、防戦一方になった。後半だけで13本ものシュートを浴びた。だが、左右に揺さぶる相手の攻撃に対し、組織で対応。「戦う・走る・粘る」を信念にゴール中央を固め、間を割らせなかった。「押し込まれても、粘れることが自分たちの良さです」と山田。GK菅沼一晃(2年)も好セーブを連発した。

シルバーコレクターからの脱却だ。県総体で2度(15、16年)、県選手権(16年)で1度、決勝に進出するも敗退。2年前、藤枝明誠との県選手権決勝に、1年ながら右サイドバックで出場した山田は、強い決意で試合に臨んでいた。「守備が最優先でしたが、自分が『試合を動かせれば』と思っていました」。

40年間王座を守り続けた中部地区勢の牙城も崩した。指揮官は「毎年4強に入るチームを作れば、チャンスはあると思っていました」。言葉通り、最近5年で4度4強以上に入り、着実に地位を確立してきた。

明日19日には、全国大会初戦の相手が決まる。静岡県代表は3年連続初戦敗退中で、同校はサッカー王国復活の重責も背負って戦う。青嶋監督は「正月と言えば、高校サッカー。一生懸命準備します」。次は全国舞台で、その名をとどろかせる決意だ。【古地真隆】