元日本代表FW武田修宏氏(51)が20日、ヴェルディ川崎(現J2東京ヴェルディ)で同僚だった故藤川孝幸さん(享年56)を悼んだ。この日、日本-キルギスが行われる愛知・豊田スタジアムで取材に応じ「まだ若いよ、寂しい」と悲しみを口にした。

藤川さんとは日本リーグの読売クラブ時代から、ともにプレーしてきた。「まだプロになる前、よみうりランドの駅までラモスさんと行って、そこからグラウンドまで上がっていく坂は藤川さんの車で送り迎えしてもらっていた」と回想。「都並さんや松木さんとチームを明るくしてくれていたし、レギュラーGKは菊池がいたけど、出てきた時にはPK戦で防いだり、Jリーグ元年の清水戦で途中から出てきて止めてくれたり、印象深いGKとして記憶に残っている」と思いをはせた。

今年4月、藤川さんが末期の胃がんで余命3カ月と診断されたことを告白。翌5月には、ラモス氏や武田氏、都並敏史氏、永井秀樹氏らが集まり、闘病を支援する「激励マッチ」(味の素スタジアム)を開催。「いま思えば、半年前に最後の試合ができて良かった。歩けなかったから大丈夫かなと思っていたけど、車いすで来てくれて。同じ(ヴェルディーのチームカラー)緑のユニホームを着られて、うれしかった」。藤川さんも「何とか奇跡を起こして、みんなに恩返ししたい」と話していたが、かなわなかった。それでも、武田氏は「他界してしまって寂しいけど、仲間みんなでプレーできたのは、いい思い出」と振り返った。

藤川さんの息子、藤川誠人(4年=神奈川・桐蔭学園高)は慶大で同じGKとしてプレーしている。武田氏は試合を見たことがあるといい「息子さんも、よく止めるんです。反応とか、ホントそっくりで。お父さんが亡くなって大変だと思うけど、うまいGKなので頑張ってほしい」とも話した。また、ともに93年「ドーハの悲劇」を経験した日本代表の森保一監督(50)にも言及。「森保もサンフレッチェ広島の一員として藤川さんと対戦してるはずだから。頑張ってくれると思う」とキルギス戦の健闘に期待した。

最後は古巣のことを気にかけた。今年、東京ヴェルディはJ1参入プレーオフに進出した。25日の初戦で大宮アルディージャに勝てば、次はFWカズが所属する横浜FCと当たる。「見に行こうと思っているし、こういう時にはパワーがもらえるもの。勝ったらカズさんと対戦できるしね。ぜひプレーオフを勝ち上がって、藤川さんのためにも昇格してほしい」とOBとしてエールを送っていた。