アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)でクラブ悲願の初優勝を果たしてから、初めての試合だった。鹿島アントラーズにとっては、限りなく難しい試合だった。

「アジア王者」という肩書がついた。鹿島のサポーターにですら「アジア一だぞ」と言われる。周囲に見られる目が変わった。まして、相手はカテゴリーが1つ下のJ2ヴァンフォーレ甲府。「勝って当たり前」と思われてしまう。

しかし、その甲府は既にリーグ戦を終えており、失うモノが何もない。清水エスパルス、セレッソ大阪に続いて「J1を食ってやる」と、目の色を変えてやってくるのは当たり前だった。

そうした「難しさ」をどうこらえるか。「縦パスが多く、サイドチェンジが少なかった。自分たちで難しくしてしまった」とDF昌子源は言う。大岩剛監督は「自分たちのことに集中しよう、頭を切り替えようと話はしたが、意識すればするほど、切り替えようとすればするほど難しくなってしまうと私自身、感じました。ただ、選手たちは臨機応変に、うまくいかないながらも修正しながらやってくれた」。苦労し、手を焼きながらも、選手は焦らず、互いのミスを補い合い、甲府に受けては立たなかった。最後の一線を越えさせなかった。そうして後半31分のMF土居聖真の決勝点が生まれた。鹿島の勝負強さが、際立った試合と言ってもおかしくはなかった。

終了間際には両膝を手術したMFレアンドロが約7カ月半ぶりに復帰した。肉離れで離脱していたDF内田篤人もベンチ入りを果たした。今後もまだ、過密日程は続く。次のリーグ仙台戦は中2日で迎える。ただ「こういう接戦をモノにできたのは、次につながる」と、昌子はうなずいた。