ベガルタ仙台が0ー1で浦和レッズに敗れ、初優勝を逃した。前半13分にCKからのクリアボールを豪快に決められて失点。相手の7本を大きく上回る16本のシュートを放ったが、決定力の差が明暗を分けた。FWジャーメイン良(23)の3戦連発弾などで初の決勝舞台を経験できたが、悲願の3大タイトル東北勢初戴冠は持ち越しとなった。

仙台の選手たちが、浦和イレブンが天皇杯を掲げる表彰式を、しっかりと目と心に焼き付けた。直接FK3本を含む両チーム最多5本のシュートを放ったFW野津田岳人(24)は、下唇をかみながら、頬には涙がつたった。多くの選手が悔しさにこらえきれず泣いた。

守備的MFとして攻守に奮闘したチーム生え抜きの奥埜博亮(29)も「この景色は一生忘れてはいけない。タイトルには近づいたが、東北に持ち帰る難しさも、あらためて実感した」。計16本のシュートは放ったものの、大舞台でこその集中力の差を痛感した。

シュートには必ず複数人がマークに付いてきた。サイド攻撃も光ったかに思えたが、選手の感覚は外に追いやられた意識が強かった。今大会4回戦から3戦連続弾の「天皇杯男」ジャーメインも起点にはなったが、シュート0本で途中交代。「決勝の舞台で何ができるかということが重要なこと。それを体感できたことは収穫。うちの攻撃も守備も1人1人のレベルアップは欠かせない」。会見で悔し涙を流した渡辺晋監督(45)も「ジャメは3歩進んで2歩下がるような形ですが、まだまだ伸びしろがある。走ればウサギのように速いが、カメのように成長してくれている」と賛辞を贈った。新戦力誕生もクラブとしての収穫だ。

負けはマイナス材料だけではない。5万978人の大アウェーの雰囲気も知った。仙台サポーターも負けずに応戦した。12年にJ1で2位とはなったが、初の決勝進出は大きな経験値に変わる。浦和に在籍した15年度に決勝で敗れた経験のあるFW石原直樹(34)も「優勝することも大事ですけれど、ここまできて負けたということも成長できる1つ。クラブ全員のパワーに変えられたらいい」。今季11位に終わったリーグ戦だが、目標に掲げる「リーグ戦トップ5」達成に向け、貴重な1敗となるはずだ。【鎌田直秀】