サッカー女子なでしこリーグ・アルビレックス新潟レディースの監督に奥山達之氏(43)が就任した。08年から12年に続いて2度目の登板になる。復帰するまでの間、シンガポールプレミアリーグ・新潟Sを指導するなど、経験を積んできた。その中で確認したのは自身の中にある「新潟魂」。それをベースにチームづくりに挑む。開幕の伊賀戦(3月21日・デンカビッグスワンスタジアム)から19年シーズンが始まる。

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力みはない。「落ちついています。どうやってやろうかな、という感じです」。淡々とした、たたずまいと同じように、奥山監督は自然体で2度目の指揮を執る。昨年は新潟の下部組織ディレクター。1歩引いた立場で新潟レディースを見ていた分、グラウンドに立つことになってもさほど違和感はない。

1月28日にチームは始動した。目標はリーグ戦、リーグ杯、皇后杯のいずれかのタイトルを取ること。「将来も常に上位で戦える安定した力をつける」。昨季はリーグ戦5位。「大崩れはしなかった。それくらいの力はある」と手ごたえをつかんだ。前回監督時の主力、MF上尾野辺めぐみ(32)FW大石沙弥香(33)が健在だ。「彼女たちは僕のやろうとすることを分かってくれると思う」。自分を知っている選手がいることはチームづくりのプラスになる。

指導者として実績を積んできた。99年の新潟の下部組織、スクールのコーチを皮切りに5チームに籍を置いてコーチ、監督を務めた。「名ばかりの経験値は必要ないんです。中身がないと意味がない」。指導者としての自身に厳しい目を向ける。「単なる技術や戦術の発信だけではだめ。選手が充実感を持って、納得してサッカーができるようにするのが役目」。選手と周囲の関係者の力があってチームが成り立つ。指導者としてそこを大切にする。

アップルSCから当時北信越リーグで戦っていた、アルビレックス新潟の前身、新潟イレブンに入団した。プロとして心構えを教えてくれたのが、元清水の杉山学(50=現新潟経営大監督)、平岡宏章(49=現清水エスパルス・ユース監督)らJリーグ経験者の先輩たち。指導陣から意に沿わない指示をされると不満の表情を見せた。そのたびに激しく叱られた。「面白くなくても耐える」。それが基本だった。一方、グラウンドを離れると遠慮なく意見をぶつけ合い、励ましてもらえる間柄。厳しさと優しさの中でサッカー人として育まれた。

監督として影響を受けたのは反町康治(54=現松本山雅FC監督)。反町が新潟の監督に就任した当初の01、02年、スクールコーチをしながらトップチームの練習に補助として参加する機会が多かった。そのたびに指導を注視した。「全体の細かさ。試合に対する準備の徹底ぶりなど、考える幅が広い」。今でもそこを土台に据える。

心構えは「アルビレックスのエンブレムに誇りを持つ」。現役時代はクラブハウスもなく、公共のグラウンドを借りてはその片隅で着替えをして練習した。「立ち上げのころの選手たちがいちばん大事。そこが忘れられがちになっている。あの先輩たちがいないと今はない」。育ててくれたクラブへの愛着は強い。

「上尾野辺を筆頭にどれだけまとまって、若い選手がついていくか」。新潟レディースの選手たちにも、”新潟愛”、チーム一丸を求める。「最後に彼女たちが笑えるシーズンにしたい」と笑顔を見せた。【斎藤慎一郎】

◆奥山達之(おくやま・たつゆき)1976年(昭51)1月30日生まれ、新潟市出身。東京学館新潟では2、3年時に全国高校選手権に出場。アップルスポーツカレッジを経て、95年に新潟イレブン(現J2新潟)に加入。ポジションは主にDF。98年に引退。99年から新潟の下部組織の指導者に。13年からシンガポールリーグの新潟Sのコーチ、14、15年は監督を務めた。16年は新潟医療福祉大女子サッカー部監督。