マイナビベガルタ仙台レディースはジェフ千葉レディースに0-1で敗れた。11年の東日本大震災以降では初開催となった約9年ぶりの福島・Jヴィレッジスタジアムでの、なでしこリーグ公式戦だった。

マイナビ仙台は震災の影響で活動休止を余儀なくされた東京電力マリーゼの選手を受け入れる形で発足した経緯がある。チームには今でも東京電力でプレー経験のある選手が多く所属しており、勝利を目指して臨んだ試合だった。しかし、後半24分にミスから先制点を許すと、そのまま得点は奪えず。節目の試合を白星で飾れなかった。

震災当時、東京電力に所属していた主将のMF安本紗和子(28)は敗戦を悔やみつつ「ここで(震災後)1発目の試合ができてよかった。最高でした。マリーゼのTシャツ、ユニホームを着ている方々がいっぱいいて、温かい声援が聞こえてうれしかった」と振り返った。

同スタジアムで、なでしこリーグの公式戦が行われるのは東日本大震災前の10年10月24日の東京電力-浦和レディース戦以来となる。安本はその試合にも先発出場していた。この日はJヴィレッジも全面営業再開を果たしており「サッカーができることが当たり前ではなくて、いろんな方の支え、協力があってこそ。感謝してやっていきたい」。相手となった千葉レディースは、安本が震災後にプレー先を求めて移籍したクラブでもある。当時の千葉の対応にも思いをはせ「ジェフ(千葉)さんが快く受け入れていただいて、すんなりチームにもなじめて感謝しかない。こうして帰ってこられたのは素直に本当にうれしい」と笑顔をみせた。

また、同じくかつて東京電力に所属していたMF小野瞳(30)は「試合ができて終わりではなくて、まだまだここからがスタートだと思います」と気を引き締めた。Jヴィレッジスタジアムでの試合開催へむけては、かつて東京電力の同僚だった元日本代表DFの下小鶴綾さんと連絡を取り合ったことを明かし「いよいよ復活だねと。『楽しんできてね』と言われました」。

実際にJヴィレッジスタジアムのピッチに立つと「これがマリーゼだったらどうだったかなと思ってしまった」とも振り返った。それぐらい思い入れの強いチームだった。「もっともっとここでたくさんリーグ戦の試合をしたい」。新たな目標を胸に、これからもプレーしていくことを誓った。【松尾幸之介】