浦和レッズ-湘南ベルマーレ戦の前半31分、湘南DF杉岡大暉(20)のシュートは右ポストに当たってネットも揺らし、完全にゴールラインを割ったが、これを山本雄大主審ら審判団がノーゴールと判定。猛抗議にも判定は覆らなかった。

世紀の誤審は偶然、リーグの最高責任者と現場トップの目の前で起きた。観客席にいた村井チェアマンは「上から見ても映像で見返しても(ゴールラインを)割ったように見えた」。こわばった表情で6分間の中断を見守った。試合後はすぐ「誤審であれば判定の質を上げるため研さんするしかない」と見解を出した。

視察した日本代表の森保監督は、湘南の発奮に席を立てなくなった。「信じられない判定で心が乱されても、集中力を切らさなかった。感動した。ひたむきに戦い抜くことの大切さを教わった」。この誤審を今後の強化指針にする可能性にまで言及した。

湘南の真壁会長はハーフタイムに抗議。「明確な返答がなく後半の開始を遅らせようと思った」と明かしたが「ロッカールームの高まりを見て自分を恥じた」と撤回。大逆転が起きた。かつては誤審に対して意見書を提出したが、現在は試合直後に審判アセッサー(評価者)へ「意見交換会を要望」という形で口頭抗議することになっている。粛々とその手続きを取った。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)導入論の過熱も必至。村井チェアマンは「FIFAの基準を満たす人材育成は時間がかかるが、進めている」と明言した上で「ゴールライン・テクノロジーの先行導入も考えたい」とも話した。【木下淳】