ヴィッセル神戸が連敗地獄から抜け出した。J1リーグ戦クラブワースト7連敗、ルヴァン杯を含めた公式戦9連敗の泥沼から、FWウェリントン(31)の2発など4-1で湘南に快勝した。くしくもこの日、複数の海外メディアが英プレミアリーグ・アーセナルの元監督アーセン・ベンゲル氏(69)への監督就任要請を報道。クラブ側は否定も肯定もしなかったが、選手は一丸となり、白星をつかみ取った。

地獄のような苦しみを味わってきた。そこから抜け出す確信を得た瞬間、感情を抑えられなかった。

1-0の後半28分、2点目のスーパーゴールを決めたMF三田だ。神戸サポーター席まで突っ走り、飛び込まんばかりに喜びを爆発させた。「何よりサポーターに勝利を届けたかった。毎日、毎日苦しかった。悩んで悩んで、どうにかして勝ちたいと。(サポーターも)同じ思いをしていたはずだから」。J1リーグ戦の本拠地勝利は、3月2日鳥栖戦以来。たまりにたまったうっぷんの爆発力は、すさまじかった。

高熱で欠場が続いたポドルスキはベンチスタートから途中出場も、大黒柱のイニエスタは欠場した。いまだ「V・I・P」がそろわない中、掲げる「バルセロナ化」よりも、魂の戦いに徹した。敵将の湘南曹貴裁監督(50)が「神戸さんは気持ちの入った戦いだった」と評した。相手の攻撃に耐え、後半9分のウェリントンの先制弾から一気に寄り切った。

この日も観戦した三木谷会長は、24日にクラブハウスを電撃訪問した。選手に向けて訓示、というよりも体験談を語った。「楽天も多額の負債を抱え、倒産の危機があった。そういう時こそ自分の出番。強いメンタルを持たないといけない」。日本経済界のトップに君臨する会長の言葉は、チーム全体に染みた。

リージョ前監督の辞任を受け、再登板した吉田監督の初勝利ともなった。「内容より、勝利を全員で喜べたことが素直にうれしい」。ただの1勝か、上昇のきっかけか。スター軍団が再スタートする。【実藤健一】