鹿島アントラーズFW安部裕葵(ひろき=20)が、スペイン1部の名門バルセロナ移籍を決断したことが5日、分かった。近く正式発表される。来週中にも渡欧するとみられ、ベンチスタートが予想される6日の磐田戦(カシマ)が、国内でのラストマッチとなる。

    ◇    ◇    ◇

3年前まで無名の高校生だった安部が、世界屈指のビッグクラブへの挑戦権を手にした。関係者によると、かねて海外移籍を望んでいた安部は、先月正式オファーが来た段階からバルセロナ入りを決めていたという。日本代表の南米選手権から帰国後、今月クラブに意向を伝えたようだ。

16年夏の高校総体で、別の選手を物色していた鹿島スカウトが“たまたま”発掘した逸材。安部も高卒でのプロ入りを目指しており、かなわなかったら「浪人して早稲田に入り、サッカーは辞めるつもりだった」と言うから、まさにシンデレラ・ストーリーだ。

関係者によると、移籍金は設定の満額を上回る約200万ユーロ(約2億5000万円)で、トップ昇格までの間は年俸25万ユーロ(約3125万円)の完全移籍となる。鹿島としては今季10番を託した期待の星だけに、今夏の海外移籍は避けたいところだったが、最後は本人の成長を願う“親心”を見せた形だ。

鹿島で過ごした2年半で、海外チームとは何度も対戦してきた。ルーキーイヤーの17年夏には「Jリーグワールドチャレンジ」で、バルセロナと同じスペインのセビリアと対戦。途中出場ながらドリブルで3人をかわしてアシストを決め、マンオブザマッチを獲得。世界に名をとどろかせた。18年は鹿島でACLを制覇し、クラブW杯に出場。Rマドリードに敗れて人目をはばからず号泣する姿は、多くのサッカーファンの目に焼き付いているはずだ。

バルセロナといっても、2部B(3部相当)チームからのスタートになる。合流後には、生き残りをかけた厳しい日々が待ち受けているに違いない。それでも無名からはい上がってきた男。スペインでも3部からのし上がっていくだろう。