曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(50=指導自粛中)のパワハラ疑惑に揺れる湘南ベルマーレから、初の退団者が出た。チーム最多5得点のMF武富孝介(28)が期限付き移籍元の浦和レッズに復帰することを15日、両クラブが発表。渦中の湘南を通じて異例コメントも出した。

「曹監督の下でプレーしたいと思い、今季もう1度ベルマーレに来た自分としては、一時的な措置とはいえ、この先がどうなるか分からない状況のまま100%サッカーに集中できるのか、不安を覚えているというのが正直な気持ちです」

来年1月31日まで契約は残っていたが、騒動の影響を受けて前倒し。関係者によると、先月復帰の打診が届いた中で「僕は曹監督の指導には愛情があったと思っています」と強調した通り、恩師を慕って残留する可能性があった。しかし、問題が表面化した12日を境に急展開。この日、浦和の練習に合流した武富は「迷ったけど(夏の移籍市場の)最後の最後に、曹さんがグラウンドに出られなくなった。迷いや悩みが続くより、しっかりサッカーをしたかった」。登録期限(16日)前々日に決断し、覚悟を込めた書面コメントについては「いろんな情報が飛びかう中、素直な気持ちや正直な現状」と説明した。

「曹監督がいれば、今ここ(浦和)にいなかったか?」との質問には「その可能性もないことはない」と複雑な胸中を、率直に打ち明けた。上層部の問題で、現場が苦渋の決断を迫られた形。余波がついに選手流出へ発展したが「もう気持ちはハッキリしている。浦和のために全力を出し切るだけ。湘南で成長した姿を見せたい」と犠牲者の感は出さなかった。【木下淳】