Jリーグは26日、同日開催予定だったサンフレッチェ広島-名古屋グランパス(Eスタ)を急きょ中止にした。

名古屋に新型コロナウイルスの感染者が3人確認され、広島戦に臨む選手らが濃厚接触者にあたる可能性があったため、試合開始7時間前に異例の中止発表となった。Jリーグ再開後にコロナの影響による中止は初めてで、代替日は未定。村井満チェアマン、名古屋小西工己社長(ともに60)が、共同会見で苦渋の胸の内を語った。また、8月1日の次節・名古屋-柏レイソル戦(豊田ス)はリモートマッチ(無観客試合)にせず、有観客での開催を目指す。

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広島-名古屋の中止が発表されたのは、午後6時キックオフのわずか7時間前だった。オンラインで会見した村井チェアマンは「感染力の強さ、用心している選手が感染することを現実として受け止め、恐ろしさを再認識しています」と説明。午前8時からのJリーグと名古屋の緊急会議で結論を出し、同11時に発表となった。

国内で再び広がる感染は、Jリーグにも確実に及んでいた。名古屋では24日にDF宮原和也(24)の感染が判明。それを受け、クラブ独自に25日に選手ら60人のPCR検査を実施し、陰性が確定した選手16人とスタッフ1人の計17人が同日夜、遠征先の広島に入った。その後にMF渡辺柊斗(23)と、フィッカデンティ監督以外のトップチームスタッフ1人が新たに陽性反応を示したことが、中止への決定打となった。

保健所からは宮原の濃厚接触者は「該当者なし」と示されていたが、新たな感染者2人への見解は、広島戦に間に合わない可能性が高かった。仮に濃厚接触者に指定された選手が、広島戦でベンチ入りすれば混乱を極めていた。

村井チェアマンは「(名古屋の)17人は陰性であるものの濃厚接触者がいるとすれば、確実に安全でない状況で試合を行う可能性もある」と指摘。ベンチ入りは18人でなくともGK1人を含む最低14人、特例で13人以下でも成立の場合もあったが、名古屋小西社長は「14人の登録が難しい旨をJリーグに相談した」。目に見えない感染拡大に、慎重にならざるをえなかった。

今回感染した名古屋の3人は、2週間に1度行うJリーグによる17日の公式検査で全員が陰性判定を受けていた。1週間にも満たない間隔で感染してしまう現状は、どこのクラブにも潜む危険性を示す。Jリーグが新たな岐路に立たされている。【横田和幸】