サガン鳥栖は11日、金明輝(キム・ミョンヒ)監督(39)が新型コロナウイルスに感染したことを発表した。Jリーグの監督では初の感染者。8日に敵地鹿島アントラーズ戦で指揮を執り、翌9日に38度まで発熱。平熱に戻った10日の練習後、病院を受診して陽性判定が出た。佐賀県によると、発症日は8日。クラブが一連の流れを把握したのは陽性判定が出た10日となり、竹原稔社長(59)はオンライン会見で「私どもの管理不行き届き」と謝罪した。

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鳥栖の発表では鹿島戦当日の8日、朝の検温で36度3分だった金監督だが、「昼に微妙な違和感」を覚えたという。竹原社長によると「感覚的なもので体がだるい感じ。(試合当日)いろんな感情が交錯する中で、いつもあるようなレベル」と釈明した。ただ、その状況などをクラブが把握したのは2日後だった。佐賀県は鹿島戦の8日が発症日としている。

佐賀に戻った9日夜に倦怠(けんたい)感と38度の高熱が出たが、10日朝の検温で36度4分の平熱に戻ったことで、金監督はそのまま練習を指揮。だが再び倦怠感があったことで、同日に佐賀県内の病院でPCR検査を受けた結果、午後3時に陽性判定が出た。クラブが一連の流れを把握できたのもこの日だった。

本来なら高熱が出た9日の時点で、活動の自粛を判断をしてもよかったのかもしれない。Jリーグのガイドラインでも休む勇気、報告する勇気を訴えている。一方で鳥栖は1日のFC東京戦前日、選手に発熱(後に陰性判定)があったため大事を取って遠征から外している。

竹原社長は、鹿島戦での指揮については「甘かったというのは精査しなければならない」と説明。高熱が出た翌日の練習でも、選手を指導したことには「私どもの管理不行き届きとは認識している」と謝罪した。誰でも感染の可能性があるだけに、感染したことではなく、問われるのは各自の対処法についてになる。

濃厚接触者はコーチらスタッフ3人とされ、既に隔離されている。残った選手ら89人はこの日、クラブ独自のPCR検査を受けた。12日はルヴァン杯サンフレッチェ広島戦(午後7時、Eスタ)があり、選手らが陰性と確認され次第、広島へ移動する。「開催できると思っている。仮に陽性者が出ても誰が濃厚接触者かは、早い段階で分かる」と竹原社長。桑原勇斗コーチが代行で指揮するが、下部組織のスタッフ6人もコーチ登録を済ませ、最悪の事態に備えている。【横田和幸】

○…鳥栖は会見後、オンラインで緊急のサポーターミーティングをオンラインで行い、事態を説明した。約400人のファンに、竹原社長は「(11日に検査した)選手らが全員陰性になると思っているが…申し訳ない」と話し、金監督へは「声援を送ってほしい」とし、言葉を詰まらせる場面があった。この日、自主練習後に自宅待機した主将のDF小林ら選手は、危機を乗り越えるため一致団結しているという。

◆金明輝(キム・ミョンヒ)1981年(昭56)5月8日、兵庫県生まれ。国籍は韓国。初芝橋本(和歌山)からJリーグ市原(現J2千葉)入り。城南(韓国)などを経て鳥栖で現役引退。鳥栖の下部組織で指導者となり、18年10~12月に初めてトップチーム監督に就任、19年はコーチとして開幕も5月から再び監督就任。現役時代は186センチ、76キロのDF。監督としてJ1通算13勝11分け14敗。