元なでしこジャパンのFW永里優季(33)が、男子のチームに移籍した。

10日、米女子サッカーリーグ(NWSL)シカゴ・レッドスターズから神奈川県2部「はやぶさイレブン」への期限付き移籍が発表された。契約期間は今年末までで背番号は「17」。永里は厚木市で入団会見を行い、かねて夢見ていた男子チームでの挑戦に意欲を示した。

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女子サッカーで頂点を極めた永里が、男子リーグに参戦する。選んだのは地元厚木市を拠点とする神奈川県2部の「はやぶさイレブン」。黒のトップスとパンツにマスク姿で登壇した永里は「男性の中でどれだけできるかは未知数だと感じています。海外での経験を生かしてチームの力になれるようベストを尽くしていきたい」と意気込んだ。

本能で決めた。新型コロナウイルスの影響で今季のNWSLは6月下旬から約1カ月間の短期開催へ。8月以降はプレーする場を失っていた。他の女子チームでプレーする選択肢もある中でよぎった「いつか男子チームでプレーしたい」という思い。「潜在意識の中に幼い頃からあったと思う。本能に従って生きた流れかな」。すぐに、はやぶさイレブンでプレーする兄の源気(34)に連絡をとり、クラブ関係者も「彼女らは厚木の宝。全力でサポートしたい」と快諾した。

異例の決断は世界も驚かせた。ツイッターではFIFA女子W杯の公式アカウントなどが永里の移籍について次々と投稿。ポツダム(ドイツ)の一員として09-10シーズンに優勝を果たした欧州女子CLの公式アカウントはトロフィーを掲げる当時の永里の写真と共に「歴史に残る期限付き移籍」とつづった。国内では男子の第1種(一般・大学)チームに登録された初の女子プロ選手に。フィジカル面などでの男子との差は大きいが「ポジショニングや細かい駆け引き、激しいコンタクトを受けないプレーは海外でも磨いてきた」と自信も口にした。

会見後半には兄妹も登場し、3ショットも披露した。チームメートとなる兄からは「技術は通用すると思う。優季ならできちゃうんじゃないかと僕も思っている」とエールを受けた。9日には新天地での初練習もこなしたが、移籍による登録の関係で実戦デビューは最短でも10月3日以降となる。前例のない約4カ月間の挑戦。永里は「何かに挑戦する勇気、1歩を踏み出す楽しさを伝えていけたらいいなと思います」と力を込めた。【松尾幸之介】

 

◆永里優季(ながさと・ゆうき)1987年(昭62)7月15日、神奈川県厚木市生まれ。地元クラブから日テレの下部組織に所属し、中学2年時には日テレにも飛び級で参加。10年1月にドイツのポツダムへ移籍し、同年の欧州女子CLで優勝。数クラブを経て、17年にシカゴ・レッドスターズに加入。日本代表は04年に初選出され、10年以上にわたって活躍した。W杯は07年大会から3大会連続、五輪は08年大会から2大会連続で出場。11年W杯優勝や12年ロンドン五輪の銀メダル獲得に貢献した。国際Aマッチ132試合58得点。168センチ。

◆はやぶさイレブン 神奈川県厚木市を拠点とする総合型地域スポーツクラブ「SCDスポーツクラブ」が将来のJリーグ参入を目指して19年に設立。国内サッカー最高峰のJ1から数えて9つ目のカテゴリーとなる神奈川県社会人3部リーグからスタートし、今季から2部に昇格。永里の兄で、湘南などでもプレーしたFW永里源気や、元日本代表FW永井雄一郎(41)が所属。永里を含めた3人だけが、クラブとプロ契約を結んでいる。今年8月には永里の妹で16年に現役引退した元日本代表の永里亜紗乃(31)も同クラブのフットゴルフチーム「はやぶさイレブン+F」に所属している。