J2の東京ヴェルディが来年1月にも資金繰りが立ち行かなくなる可能性があることが15日、分かった。コロナ禍もあって経営が苦しくなり、クラブは約10億円の増資を目指して投資企業を募り、増資のめどが立った。しかし、影響力のある株主のゼビオホールディングス(本社・福島県郡山市、以下ゼビオ)が、新たな投資家の出現を望まないとして、クラブと対立していることが判明した。

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日本サッカーをけん引してきた名門東京Vが、苦しい状況に追い込まれている。この10年間で売り上げを2・5倍とするなど健闘してきたが、関係者によると、コロナ禍の影響で、今季だけで約5億円の赤字見通しとなり、来年1月末までに運転資金が底をつく可能性が出てきた。現段階では増資が数少ない打開策の1つとみられる。ところが、株式の保有割合に合わせて交付を受けられる新株予約権などの権利を持つゼビオ側が増資には否定的で、対立しているという。

東京Vは増資のめどが立ったことから、現体制で増資して立て直す構想を持っている。しかし、10年の親会社の日本テレビ撤退によって、ゼビオに対して発行した新株予約権が足かせとなり、現実的には難しいという。Jリーグ幹部は「今の体制を一新して、ゼビオが経営するのがスムーズ」とし、ゼビオが新株予約権を行使して、経営の主体となって東京Vを立て直すしかないのではないかと指摘する。

しかし、経営の苦しい東京Vを傘下に入れると、株価にも影響するため、ゼビオの株主からの猛反発も予想される。経緯を知る関係者は「より現実的な選択はゼビオが新株予約権を行使して東京Vの現経営陣を一掃した上で、タイミングを計り、他の企業へ転売することだろう」と指摘する。年内には東京Vの株主総会が開かれる予定。ゼビオから東京Vに出向中の森本譲二副社長は、取材に対して「今は何にも言えない」と言葉を濁した。

Jリーグは地域密着を掲げ、チーム名から企業名を排除して全国にクラブを増やしてきた。しかし、その理念と異なり、企業の利益に左右されている。

◆東京ヴェルディ1969 69年に創部された読売サッカークラブが前身となり、91年にJリーグに加盟。J発足から01年までは神奈川県川崎市がホームタウンで、チーム名はヴェルディ川崎。日本リーグ時代には日産自動車とともに、2頭体制で日本サッカーをけん引した。ホームスタジアムは味の素スタジアム、所在地は東京都稲城市。現在J2に所属。主なOBには、カズ(三浦知良)、ラモス瑠偉、ビスマルクら一時代を築いたスタープレーヤーがずらり。

◆新株予約権 発行した株式会社に対し、権利を行使することで、保有割合に合わせて株式の交付を受けられる権利。ゼビオは、日テレが東京Vから撤退した10年に9000万円を支払い、新株予約権51%を取得した。その後、56%になったが最近そのうち11%を行使して1000株を獲得し、45%となった。仮に今後、ある企業が東京Vを100億円で買い取ったとしても、翌日にゼビオが45%の新株予約権を行使すれば、45億円分はゼビオのものになる。