監督の交代で劇的に生まれ変わったセレッソ大阪は8日、北海道コンサドーレ札幌とのJ1リーグ戦に臨む。チームは7日、大阪市内で調整後に敵地に向かった。

C大阪は8月26日に成績不振でレビークルピ前監督を更迭。コーチだった小菊昭雄監督(46)が内部昇格し、別人のようなチームに変身している。

交代後の公式戦3試合は次の通り。

▼8月28日 J1リーグ戦(A)1-0G大阪

▼9月1日 ルヴァン杯準々決勝第1戦(H)0-1G大阪

▼同5日 ルヴァン杯同第2戦(A)4-0G大阪=C大阪の準決勝進出

 

この日、オンラインで取材対応した小菊監督は「この3試合はすばらしい結果、内容、チーム内競争の下でスタートが切れた。札幌戦は非常に大事な試合なので、リセットして全員で向かっていきたい」と意気込みを語った。

今季開幕後は好調を維持したものの、ブラジル人指揮官の下、4月以降は一本調子の内容が多く、勝ち点の取りこぼしが続いた。新監督に交代後の3試合は強度の高い接点でのプレー、前線からのプレス、規律ある攻守の切り替えなど、守備をベースにしながらも守備的に見えない、むしろ攻撃的なサッカーに転じている。

同じくこの日、取材対応したFW加藤陸次樹(むつき、24)は「選手1人1人が、監督が求めていることを1試合通してできたので結果につながった。選手はやることがはっきりしている。全員が試合に出る準備をして、けがを怖がらずにプレスにいっている」と好調の理由を説明した。

新監督の選手起用も絶妙だ。前監督下では主力がほぼ固定されており、控え選手はあくまで控え。だが、小菊監督は「準備」をキーワードに、練習から必死にアピールしている、力を備えた選手は、急場しのぎではなく、信頼を寄せ、試合に使う。

5日のG大阪戦では4-0と、大阪ダービーの過去の公式戦最多得点差を実現させた。先制点を奪ったFW山田寛人、MF喜田陽(ともに21)ら、いわゆる小菊チルドレンと呼ばれる、これまで日の当たらなかった若手が大活躍した。

さらに好タイミングだったのが、スペインから10年ぶりに古巣復帰した元日本代表MF乾貴士(33)の存在だ。5日の後半途中から復帰後初出場を飾った。加藤は「乾君が入って、すごく声を出してもらっている」と、練習時からチームの雰囲気が変わったことを証言。硬直していた組織が、一気に前進を始めた。

一方でここにきて、主将のMF清武弘嗣やDF丸橋祐介(ともに31)が故障で離脱。MF奥埜博亮(32)やDF瀬古歩夢(21)も故障を抱え、万全ではない。開幕後、選手層を積極的に拡充させてこなかったツケが今後、回ってくる可能性はある。

現在12位にいるJ1リーグでの優勝は絶望的。逆にベスト4に進んだルヴァン杯、ベスト8に入った天皇杯、1次リーグ突破を決めているアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の3つの大会で、タイトル獲得を射程圏に入れている。

サッカー界では、監督交代によって選手が奮起し、一時的に勝利をつかむ「解任ブースト」という言葉がある。もちろん、C大阪にもこの作用が働いているのは事実だが、小菊監督の規律ある小気味いいサッカーを見ていると、偶然ではないことも分かる。

「私たちはこの順位(J1で12位)にいるチームではない。1つでも上の順位を勝ち取っていきたい」。C大阪でコーチ歴約15年の末、初めて監督というポジションに就いた小菊監督。Jリーグでの選手経験もない無名の指揮官が、残り3カ月で大きな仕事をやってのけるかもしれない。【横田和幸】