ヴィッセル神戸がミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(65)を電撃解任し、強化部スタッフの吉田孝行氏(45)が同クラブで3度目の監督に就任することが28日、分かった。

スペイン人監督が4月に就任後は最下位に転落し、J2降格の可能性が高まっていた。今季3度目の監督交代で激震が走った神戸は今後、元スペイン代表の主将MFアンドレス・イニエスタ(38)の去就問題に発展する可能性もある。

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最下位の泥沼が続く神戸が、今季3度目の監督交代に踏み切った。4月上旬に17位でバトンを託されたロティーナ監督は、その後に転落した最下位から抜け出せず、就任後2勝1分け6敗で解任が決定した。

関係者の話を総合すると、激震の理由はイニエスタにあったという。1-3で敗れた18日の柏戦後、クラブ内では5月に38歳を迎えたスーパースターの起用法を巡り、具体的な意見がかわされたという。1選手の枠を超え、英雄だからこその話し合いだった。

現在7試合連続で先発出場中だが、より1試合の中でのプレー時間の制限を設けるか、休養(欠場)をはさみながら出場するか、イニエスタの能力を最も発揮できる環境を論議。その中でロティーナ監督とクラブは妥協点が見いだせず、前節(26日)浦和に0-1で敗れた後、成績不振を含めて解任が決まった。

そのイニエスタもクラブやチームの方針に対し、温度差や違和感を覚えているようだ。敗れたものの一丸態勢が必要だった浦和戦後の控室に、ロティーナ監督がほとんど顔を出さなかったことに、主将として激怒していたと証言する関係者がいる。

イニエスタとの契約は来季まで1年半を残すものの、神戸に入団した18年夏から4年がたち、バルセロナを目指したサッカーが今や堅守速攻型に変更。選手は混乱し、主将への依存度も減りつつある。仮にJ2降格の場合を含め、今後はイニエスタの去就問題に発展する可能性がある。

17、19年に続き、神戸では3度目のシーズン途中での監督登板となる吉田氏は、次節7月2日鳥栖戦(駅スタ)から指揮を執る。イニエスタの起用法や去就問題を抱えた神戸を、J1残留に導けるか。あまりにも危険なバトンを託されたことになる。

 

◆3度目の登板となる吉田孝行新監督とは 横浜F消滅前最後の98年度天皇杯決勝で、優勝に導く伝説のゴールを決めた元FW。13年に現役を引退した神戸で、その後はコーチを務めて17年8月、19年4月にそれぞれ途中で監督就任。イニエスタが新加入した18年夏当時も監督を務めていた。21年はJ2長崎で監督就任。今年1月から神戸強化部スタッフとして練習を見守っていた。兵庫・川西市生まれ、滝川二卒。

 

【ヴィッセル神戸の今季主な動き】

◆3月10日 日本協会は昨年までJ2東京V監督だった永井秀樹氏が、在籍当時のパワハラ問題でS級指導者ライセンスを1年間停止する処分を決定。

◆3月19日 清水戦に引き分けて、開幕7戦で4分け3敗と未勝利が続き、翌20日に三浦淳寛監督の契約解除を発表。

◆3月21日 コーチから内部昇格の形でリュイス暫定監督が就任。スポーツダイレクターに永井氏が就任も、パワハラ問題の影響で一部サポーターからは、同氏の就任凍結を求める提言書がクラブへ提出される。

◆4月2日 三木谷会長と永井SDが、京都戦前に取材対応。同会長は「本人から1度(SD)辞退の申し出があったが私が慰留した。信頼は揺るぎない」と任務の続行を明言。

◆4月8日 今季3人目の指揮官となるロティーナ監督の就任を発表。

◆5月14日 サポーターとの意見交換会に、オンラインで参加した三木谷会長は「(負傷者が続出し)もう少し補強が必要だった」と謝罪。その後の鳥栖に4-0で大勝し、開幕12試合目で待望の初勝利。

◆5月21日 湘南に1-2で敗れ、最下位転落。

◆5月23日 三木谷会長が練習を緊急視察し「一層の覚悟を持って挑んでいただきたい。1センチ、10センチ、1歩、気迫の差だと思う。覚悟と気迫を持って頑張りましょう」とゲキ。引き続き会長職は辞めないとも明言。

◆6月26日 浦和戦後半終了間際の失点で0-1と敗れ、残留圏15位湘南と勝ち点8差に開く。

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