ヴィッセル神戸の監督を28日付で解任されたミゲル・アンヘル・ロティーナさん(65)は、最後まで自身の信念を貫いてクラブを去った。

4月8日の就任発表から約2カ月半。その間のJ1リーグは、2勝1分け6敗で最下位の泥沼を脱出できなかった。成績不振が解任の理由ではあるが、もう1つがMFイニエスタの起用法だったとみられる。

18日の1-3で敗れた柏レイソル戦後、クラブはイニエスタの今後の起用法について、ロティーナさんを含めて話し合いを持った。関係者によると、ここでクラブと監督の主張が大きく食い違ったという。

クラブは、38歳になったイニエスタの出場時間を制限し、時に休養(欠場)させるなど、無理はさせたくない姿勢だったという。

ロティーナさんは、同じスペイン人のイニエスタに全幅の信頼を置いていた。もちろん、心身の状態を見極めた上でだが、イニエスタをあくまで必要な戦力と考え、先発で使い続けてきた。それが神戸の基本形と考えていた。

出場記録を見れば、就任後のリーグ戦全9試合にイニエスタを起用し、うち8試合が先発。途中出場したのはコンディション不良明けの1試合だけだ。

実際に5月の取材では、決して運動量が多くはないイニエスタが、ロティーナさんのスタイルに合うか否かを問われ、明確に答えていた。

「彼がプレーすることでボールを保持できる時間が増え、守備が減るのがアドバンテージ。ボールを持っていない時は、守備では足を使うのも重要だが、同時に頭を使うのも大切。賢い選手は、足腰のある選手と同様に守れる」

ロティーナさんの最後の指揮となった26日の浦和レッズ戦も、迷わず先発で送り出している。日本特有の蒸し暑い中、7試合連続での先発起用だった。これらが解任の理由の1つになったとしても、指揮官に悔いはないだろう。

65歳を迎えた18日の誕生日を前に、ロティーナさんは「自分が日本にきた時は59歳だった。日本での仕事は2年ほどかなと思ったが、6年でこの国が大好きになった。なので、自分を追い出すのは簡単ではないですよ」と笑っていた。

大の親日家になったスペイン人指揮官は、東京ヴェルディ、セレッソ大阪、清水エスパルス、神戸で一仕事を終えた。今度は別のJクラブからオファーがあるかもしれない。トレードマークの気むずかしい表情をしながら、その時も信念を貫いているに違いない。