横浜のMF中村俊輔(22)が、日本人司令塔として初めてのMVP(最優秀選手)に選ばれた。Jリーグ2000年の年間表彰式「Jリーグアウォーズ」が11日、横浜アリーナで行われた。また1つ勲章を手にした中村は、2002年以降のスペイン進出を狙って、来年1月に約2週間の欧州視察を行い、さらにレベルアップを図る決意だ。最優秀監督には柏の西野朗監督(45)、新人王は広島MF森崎和幸(19)が選ばれた。

 MVPが発表された瞬間。スポットライトを浴びた中村は「エッ、オレ?

 マジかよ……」と独り言を言って、首をかしげながら壇上に上った。本人は意外だったかもしれないが、実は選考委員会では「ダントツで支持された」(関係者)。初めての日本人司令塔のMVP受賞。95年のストイコビッチ、96年のジョルジーニョ、97年のドゥンガと、中盤のMVP受賞は外国勢ばかりだっただけに、中村の受賞は日本サッカー界にとって意味があった。

 J最高選手の栄誉を手にしたが、現在の自分に満足はしていない。来年1月3日の世界オールスター戦(横浜国際)後に、プライベートで欧州を視察する予定だ。フランスのパリを拠点に、イタリア、スペインなどトップリーグを視察して、戦術、技術、フィジカルなどの情報を収集する。2002年にはスペインリーグに挑戦することを目標にしているだけに、課題を見つけるつもりだ。

 現在も欧州4大リーグのビデオを取り寄せてプレーを研究しているが、ビデオにはボールのない所での選手の動きが写っていない。鹿島とのチャンピオンシップで、4人掛かりの執ようなマークに苦しんで自滅。トッププレーヤーたちのボールがない所の動きを目に焼き付けることで、壁を打破し、一段高いレベルに飛躍したいと考えている。

 中村は、ベストイレブンにも選ばれた。2年連続で受賞したのは1人だけ。「課題を見つけて、それをクリアしていくのが楽しい」が口癖。好きな言葉は向上心。97年の入団時にノートに書いた将来計画では、今年レギュラーをつかむことになっていた。常に上を目指して有言実行を続ける姿勢が、目標をはるかに上回るスピードで成長させ、この日の栄冠につながった。「来年はもっといいプレーを見せたい」。中村の視線はさらに先を見ている。【盧載鎭】

 ◇「私がとらせた…」トルシエ節さえる

 トルシエ節がこの日もさえた。日本代表のフィリップ・トルシエ監督(45)は、MVPの中村をつかまえ「わたしが左サイドをやらせたから、本来のポジション(司令塔)に戻って輝いたんだぞ。賞はわたしがとらせたようなものだ」と冗談交じりで話しかけた。きょう12日からは、日本代表候補合宿。中村は13日に天皇杯を控えるためメンバー入りしてないが、同監督は「本番(20日、韓国戦)のメンバーには入るから、ヒマだったらのぞきに来てもいいからな」と語った。【2000年12月12日付

 日刊スポーツより】