やりたいサッカーの軸はブレない!

 浦和のミハイロ・ペトロビッチ監督(57)が「所信表明」代わりに、豪雨をおしての3時間練習を敢行した。今季の始動2日目となった15日は、新年初となる戦術練習を行った。

 最初のメニュー。一方のチームは、自陣でプレスを受けながら、GKも交えて1タッチでパスをつなぐ。もう一方のチームは前線から果敢にプレスをかけて、ボール奪取から素早くシュートに持ち込む。12年の就任以来、貫いてきた「ペトロビッチサッカー」の根幹だ。

 同監督は雨風お構いなしに、身ぶり手ぶりに怒号まで交えて、選手たちに熱く指導した。何と言われようと、このサッカーをブレずに貫く-。決意は前日の監督会見でも語られていた。

 ペトロビッチ監督

 選手たちのミスで失点したり、試合を落とすこともある。昨季は西川が相手FWをかわそうとして、ボールをとられて失点したこともあった。でも私は、我々が目指すサッカーに取り組む中でのチャレンジやミスを、責めることはありません。そもそも、チャレンジが間違っているとも思いません。

 指揮官が振り返ったのは、昨年10月18日、リーグ第28節。浦和は仙台に2点を先制されながら、FW興梠の2ゴールで追いついた。しかし後半16分、バックパスを受けたGK西川が、プレスをかける仙台FW赤嶺のスライディングをかわしそこねた。

 赤嶺に当たったボールは、不運にもそのままゴールに入った。さらに1点を許し、シーズン最多の4失点。チームはそこから最終節まで、1勝3分け3敗と失速。手中にしかけていたリーグ優勝を、猛追してきたG大阪に譲る形になった。

 優勝を逃したのは当然悔しい。批判も受けた。しかし簡単にボールを蹴らず、自陣から丁寧にパスをつないでいく西川のプレーは、まさに就任以来目指してきたものだ。同監督は結果論で西川を責めるどころか、リベンジを目指す新年1発目の戦術練習の内容で、西川のプレーを雄弁に肯定してみせた。

 サッカーの監督の仕事は、5年先を見据えてのものであるべき。そう強調し、目先の結果に一喜一憂せず、目指すサッカーの熟成をはかってきた。クラブもそれに応えるように、チーム最長となる就任4年目の指揮も、ペトロビッチ監督に任せた。

 リーグ戦での雪辱に加え、アジアチャンピオンズリーグ制覇も目指す今季は、ペトロビッチサッカーの是非が問われるシーズンだ。重圧はあるが、指揮官の腹は据わっている。3時間に及んだ豪雨の練習後。びしょぬれになったのを心配し、傘を差し出す報道陣に対し「ダイジョウブ、ダイジョウブ」と事もなげに笑ってみせた。