日本協会は1日、東京-大分戦(4月29日、味スタ)で大分DF上本大海(25)に対し「うるさい」「死ね」などの暴言を吐いたとされる西村雄一審判員(36)を東京・文京区のJFAハウスに呼び、直接事情を聴いた。同協会の田嶋幸三専務理事は「死ねという発言はしていない、ということだった」と話し、同審判の言い分を「支持」する姿勢を見せた。今後は上本からも話を聞く予定だが、「死ね」発言については、近日中にも不問に付すことが濃厚となった。

 この日はまず、西村審判員が小幡・審判委員会副委員長に事情を説明。その後に田嶋専務理事が加わり、約1時間の面談を行った。当日副審だった相楽審判も呼んで話を聴いた。説明を終えた西村審判員は会見に姿を見せず、地下駐車場からタクシーで協会を離れ、田嶋専務理事だけが会見に臨んだ。

 同理事は「死ね」発言について「本人は言っていないと言っているし、ほかの審判も聞いていない。今のところ上本くん以外に、その言葉を聞いた者はいないということです」と発言。「ビデオを見れば、上本君は興奮しているように見えるが、西村審判は感情的になっているようには見えなかった。普通、『死ね』と言うことはない」と、西村審判の言い分を「支持」した。

 この日大分からは、暴言があったという報告書が届いた。同理事も「だいぶ食い違いがあるようです」と認めている。一方で、西村審判員が上本に向かって「うるさい、黙ってプレーして」と言ったことを確認。「どの言葉を聞いてのことかは分かりません」としつつ、その発言を上本が聞き間違えた可能性を指摘した。

 協会では2日も関係者への事情聴取を進める予定。田嶋理事は「言ってないと証明することは難しいが、どちらかの結論を出したい」と力説した。しかし、発言をとらえた映像、音声などの客観的な判断材料がないだけに、どちらにしろ100%の証明は不可能だ。そもそも、日本を代表するエリート審判員とJリーガーが、ピッチ上での発言内容をめぐって「言った、言わない」の泥仕合を展開すること自体、醜聞以外の何物でもない。今回の騒動の最大の問題は、審判と選手の間で信頼関係が薄れている点にありそうだ。