「日本サッカーの父」デットマール・クラマー氏(83)が、日本サッカー界に檄(げき)を飛ばした。日本が40年ぶりのメダル獲得を狙う北京五輪初戦(8月7日・対米国)まで3週間を切った19日、東京・文京区のJFAハウスで3時間20分にわたって熱弁をふるった。前日にお別れの会が行われた故長沼健監督とともに日本を銅メダルに導いた68年メキシコ五輪の思い出を語り、「大和魂」などのキーワードを挙げて日本の躍進を願った。
午後1時に始まった「クラマー氏を囲む会」は、予定の1時間をすぎても終わる気配すらなかった。60年に初来日し、黎明(れいめい)期の日本をけん引。多くの人材を育てて、メキシコ五輪銅メダルに導いた。立ちっぱなしの83歳は、時にオーバーアクションで、時に絶叫トークで、日本サッカーへの熱い思いを吐き出した。メキシコ以来40年ぶりのメダルを狙う五輪代表へ、4大会連続W杯出場を目指すA代表へ、強烈なエールは何と4時20分まで続いた。
クラマー氏
ジーコ(元日本代表監督)と20年来の友人だが、彼はW杯ドイツ大会の準備でミスをした。欧州に来る機会が少な過ぎた。海外からシーズンオフのチームを呼んでも、得るものはない。厳しい環境での苦しい試合を通してこそ強くなる。かつては金もなかったから、ダブルベッドに3人寝たこともある。そういう経験を、今の選手にも味わわせたらいい。
自らが40年前に指導した時は、日本代表強化の中心は長期の欧州遠征だった。当時の思い出を交えながら真の国際経験の少なさを指摘。さらに精神力をもっと鍛えることを説いた。
クラマー氏
メキシコ五輪3位決定戦で全力を尽くした選手の多くは、バスの中で足にけいれんを起こした。これぞヤマトダマシイ(大和魂)。日本に必要なのは、世界に置いていかれないこと。勝とうという強い意志を持ち、チームに身をささげることが大切だ。
メキシコ五輪から40年、今日まで日本サッカーを引っ張ったメンバーは「ファミリー」と呼ばれた。抜群のチームワークだったが、同氏はあえて違う言葉でチームの特徴を表した。
クラマー氏
一般的にはチームワークという言葉を使うが、実はCohesion(コヒージョン=結束)の方が好きだ。協力し合うだけでなく、より強く結びつく。それがなくしてチームの成功はない。
「第2の故郷」日本だからこそ、厳しい言葉も出た。「A代表は南アフリカ(W杯)に行くべき。行けなければ大きな痛手になる」。自らが「Jの関係者とマスコミに話したいことがある」と企画した会。200分間には、クラマー氏の熱い思いが詰め込まれていた。【荻島弘一】



