希代のレフティーが、笑顔で最後の練習を終えた。入れ替え戦でJ1残留を決めた磐田は一夜明けた14日、磐田・大久保グラウンドで軽く汗を流した。この日が現役最後の練習となったMF名波浩(36)は、ランニング中心の主力組を除いたミニゲームに参加。FW中山らとの対決を楽しんだ。J1に残した磐田の今後に叱咤(しった)激励しつつ、天才と言われた左足に、静かに幕を下ろした。

 名波は、無邪気に笑っていた。「負けた!

 最後のミニゲームは負けて終わったよ。(敵の)ゴン中山が本気なんだもん」。仲間とピッチの上で過ごした最後の1日は、サッカー少年のように駆け回った。練習後は荷物の整理を行い、全選手の最後にクラブハウスを引き揚げた。涙はない。「結構淡々としたもの。(成岡)翔のまたを抜いて、最後はカワム(河村)のまたを抜いたよ」。話は再びミニゲームに戻った。笑顔だけがはじけていた。

 仙台に勝ってJ1残留を決めた昨夜、FW中山やDF鈴木らと祝杯を挙げた。決戦前は「しっかり残留して、うまい酒を飲みたい」と話していたが、生ビール2杯だけと軽めに終えた。最後の練習へ万全の体調で臨むと同時に、喜びすぎてはいけない思いもあった。「反省はどんな分野でも必要。なぜこうなったのか、監督交代の状況になぜ至ったのか、今こそ反省する時期。なのに、まだ分かっていないように見える」。失敗が続くフロントへ、あらためて苦言を呈した。

 いつの日か、磐田へ指導者として戻ってくることを明言している。その日まで「このチームが今後どうなっていくのか楽しみだね」。厳しい叱咤(しった)と期待を寄せて「左の名波」が、静かにスパイクを脱いだ。【今村健人】