<J2:仙台1-0栃木>◇第9節◇18日◇宮スタ

 仙台FW平瀬智行(31)が、元指揮官への「見返し弾」をたたき込んだ。後半21分に2試合連続となる決勝ゴールを奪い、今季昇格した初対戦の栃木に1-0で勝利。ベガルタを今季初の連勝に導いた。相手の松田浩監督(48)は「いい思い出がない」と振り返る、神戸時代に師事した監督。移籍後初の対戦で健在ぶりを見せつけ、痛快な恩返しゴールを見舞った。

 いくら攻めてもゴールが遠い沈滞ムードを、平瀬が一蹴した。後半21分、MF斉藤の縦パスで裏に抜けだし、難しい角度から倒れ込みながら右足を振り抜く。「(栃木GK)小針が右に寄って、逆サイドが空いてたから」。00年シドニー五輪の最終予選をともに戦った小針の動きを冷静に見極め、ゴール左隅に技ありの1発を決めた。

 得点後、ピッチ中央でガッツポーズ。突き上げた指を1回は手倉森監督、もう1回は松田監督に向けた。「試合前(フィジカルコーチの)庄司さんに『元監督の前で点を決める』って話してたんだ」と平瀬。その松田監督に「仙台に移って(平瀬は)非常にいい動きをしていた。今日もそう」と言わしめた平瀬は「栃木戦は残り2試合。次も点を取って脱帽させたい」とイタズラっぽく笑った。

 神戸の最終年(07年)を「いい思い出がない」と振り返る。グロインペイン症候群に悩み、前年の30試合から3試合の出場に激減。松田監督から同年末に戦力外通告された。「当時の神戸は特殊な雰囲気だったし、プレーを楽しむことができなかった」という。

 それが仙台に移籍し「サッカーを楽しむことを思い出した。今も紅白戦のつもりで試合に出るから動きが硬くならない」と環境の変化をプラスに転化。楽しんでプレーする姿を、元指揮官に見てほしかった。チーム10人で放った20本のシュート。平瀬の思いが込もった虎の子の1発が、ベガルタを上昇気流に乗せる。